カンボジアの零細縫製工場で試されているのは「最新のマネジメント理論」だった!日本人経営者が学ぶべきポイントとは?

エンパイアアンコール工房の経営責任者、テット・ラーボさん。かつては日本人観光客に人気のツアーガイドだった。日本語も流暢に話す。縫製工場の経営責任者になったことで収入は半分になったが、チームでの仕事は毎日がワクワクするという

カンボジア・シェムリアップの郊外にある縫製工場「エンパイアアンコール工房」の経営責任者、テット・ラーボさん(30)は、自分自身が考える理想のマネジメントを実現することにチャレンジしている。彼が語るマネジメント手法は、多くの経営学修士号(MBA)コースでも大切にされている理論。権限委譲を活用し、次世代の育成に注力する。日本で多くのリーダーや組織がチャレンジしても、なかなか実現が難しいポイントだ。

ラーボさんは2年前まで経営の仕事とは無関係のツアーガイドだった。その時に知りあった日本人経営者からカンボジアでの縫製工場の立ち上げを任されたのがきっかけで、今は従業員50人規模の縫製工場の経営責任者に転身した。多くの人に働く場所を提供したいという思いが彼の背中を押した。

縫製工場が本格的に稼働して1年あまり、ラーボさんが、マネジメントで一番大切にしていることは「何のために自分がいるのかを従業員自身に真剣に考えてもらうこと」だ。この言葉には、日本を含めた世界中の多くの経営者が目指しているマネジメントの基本が含まれている。

マネジメントが果たすべき究極の目標は人材育成にある。「自分の役割を意識してもらい、その責任をそれぞれが果たす。その結果として工場の成果があがるようになることが理想」(ラーボさん)

ラーボさんには最近嬉しいことがあったという。「工場長と班長が、自分自身が判断しながら仕事を進めるようになったので、任せられるようになってきた!」

工場の現場に掲げられた生産スケジュール表には、びっしりと管理目標が書き込まれている。この数値目標に沿って、作業を状況に応じながらバランスさせていくのが、工場長や班長の役割だ。それが機能してきているのが嬉しいと語るラーボさんは、やはり何よりも人材育成に力を入れていることがはっきりとわかる。

マネジメントは管理すること、と誤解している経営者は多い。マネジメントの本当の役割は人材育成にある。次世代のリーダーを育てることができなければ、そのマネジメントは失敗していると判断できる。では、人材育成のカギは何だろうか。

それは、ラーボさんが実践している「権限委譲」(部下を信頼して仕事を任せること)にある。彼がマネジメントで大切にしている「何のために自分がいるのかを従業員自身で真剣に考えてもらうこと」は、従業員の自主性を育み、自分の役割を自分で考える自律的な社員育成につながっていく。日本の経営者は、権限委譲を、どれだけ自分自身のマネジメントに活かすことができているのかを、今一度考えてみる必要があるのではないか。

ラーボさんの工場で働く人たちはみんな地元の若者たちだ。自転車や歩いて通ってくる人も多い

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工場は街中にあり、一見するとちょっと大きめの住宅のよう。そんな立地だからこそ、地元での働く場所として住民にも喜ばれている

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