シリア紛争で増える「児童労働」、避難先のヨルダンでは47%の子どもが働く

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ヨルダンに逃れたシリア難民の子どもの半分が働く――。国連児童基金(UNICEF)と国際NGOセーブ・ザ・チルドレンはこのほど、2011年から続くシリア紛争の影響で増え続ける児童労働の実態に焦点を当てた報告書「小さな手の上の重い荷物」を共同で発表した。

報告書によれば、調査対象となった、ヨルダンで避難生活を送るシリア難民の家庭の47%で子どもが家計の一部またはすべてを担っていた。雇用主であるヨルダン人の84%が、紛争前は子どもを雇っていなかったと答えている。ヨルダンの農場で働く子どもの5人に1人は12歳未満。ヨルダンのザータリ難民キャンプで暮らしながら働く子どもの75%はけがや病気に悩まされているという。

従順で、大人より低賃金で働かせることができる子どもは、紛争の陰で、搾取の格好のターゲットとなっている。レバノンの農場は紛争前、出稼ぎ労働者に5時間の仕事で10ドル(約1200円)を払っていた。だがいまは、子どもを1日中働かせ、手渡す日当は半額以下の4ドル(約500円)だ。

報告書は、子ども兵士や性的搾取などの「最悪の形態の労働」に限らず、劣悪な環境での長時間労働などは子どもに身体的・精神的に大きなダメージを与えている、と指摘する。イラクではシリア難民の子どもの3人に1人が武装勢力に誘われたことがある。またシリア国内でも、国境付近での密輸や石油販売などに9~16歳の子どもが1日12時間働かされている。

さらに深刻なのは、幼い子どもであっても容赦されないという過酷な現実だ。シリア国内では9歳程度の子どもが危険な肉体労働を、トルコでは8歳、レバノンでは6歳のシリア難民の子どもが働かされている。

児童労働の広がりは深刻な問題になりつつある、とUNICEFは警鐘を鳴らす。紛争前のシリアは中所得国で、ほとんどの子どもは学校に通い、国民の識字率は90%を超えていた。ところが、4年半に及ぶ紛争は、400万人近い難民と760万人の国内避難民を出した。シリア国民の5人に4人が貧困状態。11年に14.9%だった失業率は14年末時点で57.7%まで上昇。この結果、シリア国内や周辺国では、多くの子どもが生きていくために働かざるを得ない状況に追い込まれている。