スワジランド国王が式典で5600万円散財! 子どものワクチン5万人分買えず

ganasのlogo中-315x235

2014年3月7日に開港したスワジランドのムスワティ3世国際空港の開港記念セレモニーに、同国政府が約590万エマランゲニ(約5600万円)を支出していたことが分かった。地元の新聞タイムズ・オブ・スワジランドが報じた。国内では感染症対策など喫緊の課題への対応が求められるなか、各方面で波紋を呼んでいる。

統合地域情報ネットワーク(IRIN)によると、14年夏のロタウイルス下痢症の流行で、スワジランド国内で約40人の子どもが命を落とし、500人以上の子どもが入院したという。

「セレモニーでの支出額(約5600万円)は、ロタウイルス下痢症のワクチン約9万3000本分(子ども約4万6000人分)の額と等しい」。スワジランド大学元准教授のリチャード・ルーニー氏は、スワジ・メディア・コメンタリーでこう指摘している。

しかし、スワジランド保健省は「ワクチンの配布は最優先事項ではない。ワクチンは値段が高いので国家予算も足りない」と、地元紙スワジ・オブザーバーに回答。下痢のまん延の原因は、各家庭や学校で、手洗いや安全な水の利用を徹底していないことだと指摘した。だが、IRINによれば、スワジランドの全人口約130万人のうち、約43万人が安全な水へアクセスできない状況にあるという。

今回の新空港開港記念セレモニーの主な支出の内訳は、セレモニーの宣伝費約1500万円、航空ショー用のジェット機のレンタル代とショーの費用約1400万円、ゲストに振る舞われた食事や菓子代約700万円、移動式簡易トイレ代約190万円など。

空港の建設は、「2022年までにスワジランドを先進国にする」という国王ムスワティ3世の計画の一環で、総額約3億ドル(約300億円)以上を投じ、10年以上の歳月をかけ完成した。だが、国際空港は、「アフリカ最後の絶対君主」と称される現国王の虚栄心を満たすための空港だと各方面から批判されてきた。

スワジランドの首都ムババーネは、南部アフリカの空路の主要拠点ヨハネスブルグから飛行機で45分程度、また、モザンビークの首都マプトからも近いため、14年7月時点で、人口わずか130万人の貧困国の新空港に就航している航空会社は1社もない。国際航空運送協会(IATA)から空港開業の許可も出ていない。

世界銀行の10年のデータによると、スワジランドの人口の60%が1日2ドル以下で暮らしている。国際通貨基金(IMF)も、国家予算はスワジランド国内の貧困解消に投入すべきとし、また、同国内にはすでにマツァパ国際空港が存在していることもあり、新空港は建設すべきではないとの見解を示していた。

ムスワティ3世は1986年に即位。国家予算から自家用のセスナ機や高級車を購入したり、13人の王妃のために宮殿を建設したりするなど、国民の苦難をよそに浪費をする国王として、常に批判がつきまとっている。(西森佳奈)