フィリピン・セブで見た「サイエンスクラス」、優秀な人材の育成か・教育格差の拡大か

0318後藤田さん、P3180570

「サイエンスクラス」(習熟度別特進クラス)と聞いてどんなイメージをもつだろうか。日本でもここ10年で導入されてきた習熟度別授業だが、世界各地で賛否両論が沸き起こっている。

フィリピン・セブ市のラホグ小学校。この学校ではサイエンスクラスが導入済みだ。「(サイエンスクラスの児童は)優秀なので、その能力をさらに伸ばすことができる」と1年生の担任教員は話す。また6年生の担任教員は「フィリピン大学セブ校の附属高校を卒業した後、国内のトップ大学や海外の大学へ進学していく」と胸を張る。

サイエンスクラスの児童は能力試験とIQテストの結果で選ばれる。1~6年生の各学年に3クラスある。1クラスの定員は35人だ。サイエンスクラスの児童が占める割合は20%にあたる。ちなみにラホグ小学校の通常クラスのでは40~50人の児童が1つの教室で学ぶ。

カリキュラムはどちらも基本的にはさほど変わらない。だがサイエンスクラスでは小学校の低学年から週1時間のコンピュータ授業がある。それに対して通常クラスではコンピュータ授業は6年生のみ。6月から始まる新学期にはインターネット環境と大型テレビが各サイエンスクラスに設置される予定だという。スカイプ(オンラインビデオ通話)を利用した授業も計画しているそうだ。

ラホグ小学校はサイエンスクラスの教育に力を入れている。しかし1 年生というと5~6歳。学力のレベルが本当に分かるのか、子どもたちの能力は測れるのか。学年が進めば、サイエンスクラスと通常クラスの間では学習レベルに差が出てしまう。このため子どもの可能性の芽をつんでいるのではないか、と批判的な見方がある一方、優秀な子どもには高いレベルの教育を提供すべきだ、との意見は強い。

サイエンスクラスの行きつく先は優秀な人材の育成なのだろうか、それとも教育格差社会なのだろうか。(後藤田知恵)