クラスの6割以上が「ひとりっ子&2人きょうだい」! セブの特進クラスの裏事情

0316土屋 校長マボロ小学校のテリシタ・マンザナデス校長

大家族が当たり前のフィリピンで、ひとりっ子と2人きょうだいが大半を占める空間がある。フィリピン・セブ市にあるマボロ小学校の特進クラス(サイエンスクラス)だ。ダンテ・カバタニアン先生が担任を務める5年生のサイエンスクラスの児童数は25人。うち16人、割合にして63%が「ひとりっ子」または「2人きょうだい」だった。3人きょうだい以上の児童はわずか9人(37%)にとどまった。

どうしてこんな奇妙なことが起こるのか。その裏側を探ると、「経済的な足かせ」「宿題の規則」、「ひとりっ子を求める本能」という3つのキーワードが浮かび上がった。

「経済的な足かせ」とは、学びたいのに学べない状態を引き起こす家計の苦しさのことを表す。サイエンスクラスに子どもを入れるには、十分な収入を得ている必要がある。サイエンスクラスでは副教材のコピー代(年間で720ペソ=約1700円)、エアコンなどの設備代(年間200ペソ=約500円)がかかる。大家族の場合、子どもたちの養育費がかさむため、こうした支払いをすることが難しいだけでなく、子どもに手伝いをさせることもざらだ。

「宿題の規則」も、大家族出身の児童にとって大きな壁となっている。カバタニアン先生が受けもつサイエンスクラスでは、1週間のうち少なくとも4日は宿題が出る。また宿題は、親と一緒に取り組まなければならない、との決まりがある。しかし、きょうだいが多いほど、子ども1人に対するケアは手薄になってしまう。

脳科学者の澤口俊之氏(元北海道大学教授)によると、IQや学歴の高い親ほど「ひとりっ子を求める本能」が強い。カバタニアン先生は「サイエンスクラスの児童たちの家庭は比較的裕福だ」と言う。高収入であることは、同時に高学歴である可能性が高いことを意味する。

フィリピン人のほとんどが大家族の出身。セブ市内のウェスト・ゴロルド・ホテルの従業員8人に聞いたところ、全員が「4人きょうだい以上」だった。5人きょうだいの三男、アンゲリト・デランテスさんは「友だちにひとりっ子なんていない」とまで言う。

サイエンスクラスは、成績優秀者が英語や算数、理科をより深く学べる授業を提供する。マボロ小学校のテリシタ・マンザナデス校長は「児童一人ひとりの潜在能力を引き出すために、高いレベルの授業を受けてもらうことは重要だ」と力強く語る。

マルボ小学校サイエンスクラスの5年生と先生

マボロ小学校サイエンスクラスの5年生と先生