世界から飢餓をなくしたい! 世界中の若者がアイデア披露

世界34カ国から集まった44人の参加者。「国際開発ユースフォーラム2015」を主催した共同代表と最終プレゼンテーションの審査員とともに世界34カ国から集まった44人の参加者。「国際開発ユースフォーラム2015」を主催した共同代表と最終プレゼンテーションの審査員とともに

世界34カ国から44人の若者が3月7日、都内のJICA東京国際センターで、先進国・途上国双方にとってウィンウィンで、途上国の飢餓の解決につながるアイデアを発表した。プレゼンしたのは、学生団体「国際開発ユースフォーラム」が主催するイベント「国際ユースフォーラム2015」に参加するメンバー。年齢は18~28歳。国籍はコスタリカやフィリピン、シリア、スペイン、アルジェリアなどさまざまだ。8チームに分かれてアイデアを競いあった。

■西アフリカの農家でインターン

1位に輝いたのは「チーム・カンパイ」。農業を学ぶ先進国の学生が、西アフリカの小規模農家に6カ月にわたってインターンとして活動するアイデアを発表した。インターン期間中の学生の住まいと食事は無償で提供される仕組み。このプロジェクトで必要なのは、学生を募集し、農家とのマッチングに必要なウェブサイトを作る経費だけだ。

インターン学生は農業の効率化と生産性の向上を現地で支援する。西アフリカは飢餓問題が深刻なうえ、小さな農家が多い。このため生産性を高める知識を得ることは大きなプラスだ。また、インターン学生にとっては、現地で経験したことを自身のキャリアに生かすことができるというメリットがある。

審査員のひとり、国際協力NGOハンガー・フリー・ワールドの西岡はるな氏は「(チーム・カンパイが提示した解決策は)本当にウィンウィン。途上国の農業従事者と先進国の学生がつながるのは素晴らしい」と称賛した。

■都市部の空き地で野菜栽培

2位に入ったのは、「チーム・ファビュラス・ファイブ」。拡大傾向にある先進国の貧困と飢餓に着目した。メンバーのひとりの出身地スペイン・マドリードでは、栄養が偏った食品しか手に入れられない貧困層が増えているという。

このチームが考えたのは、都市にある公園や空き地で農作物を育てる「アーバン・ガーデン」だ。農業のプロや学生ボランティアの支援のもと、1日数時間、自ら野菜を育てることで、新鮮な食料が手に入り、栄養の偏りを防ぐことができる。

空き地の有効活用や学生ボランティアの参加は社会にとってプラス。また参加者同士の交流で、コミュニティ内のつながりを取り戻すことも期待できる。

審査員を務めた国際協力機構(JICA)の田中耕太郎氏は「多くの人が見逃しがちな先進国の貧困の問題を取り上げたという着眼点が良い」とコメント。受賞の感想を求められた同チームメンバーのひとりは「素晴らしい(fabulous)気分だ」と会場の笑いを誘った。

■パスモで途上国農家を支援

3位は「チーム・インフィニティ」。公共交通機関に使える共通ICカード「パスモ」に1%の寄付金をつけて資金を集め、途上国の農業を支援する仕組み「パスモア(Pasmore)」を提案した。

ザンビア出身のメンバーによると、ザンビアの貧困率が80%と高い要因は、農家の教育不足や灌漑システムの不備があるという。「パスモア」で集めた資金を途上国に送り、農家の教育や必要な道具・設備に使う費用に充てる。農家の経済的自立を支援することで、貧困のサイクルから抜け出させることが狙いだ。

このアイデアに対し、国際NGOアドラ・ジャパンの齊藤吉洋氏は「パスモを使ったアイデアは目新しい」と評価した。

■価値観の深化を促す

主催者によると、国際開発ユースフォーラムが開催する目的は3つある。1つは、多くの国・地域から若者を集めることで多様な価値観を交流させ、参加者ひとりひとりの考え方・価値観の深化を促すこと。2つめは、フォーラムで得る知識や経験、成果を社会にとって価値あるものにすること。3つめは、開発を志す人材が交流するプラットフォームを創出することだ。

このイベントに参加したシリア人男性は「世界中の若者が集まり、開発の問題について話し合えるのが魅力的。自分の国では、こんな機会はめったにない。素晴らしい」と話した。