アラブにもきらきらネームがある!? 「アーヤ」「ナダ」‥‥

右側の男の子との名前はアブド・エル・ラハマーン。有名な名前のひとつ右側の男の子との名前はアブド・エル・ラハマーン。有名な名前のひとつ

「エジプトに3年住んでいた」と話すと、よく聞かれる質問がある。「アラブ圏にもきらきらネームは存在するのですか」

私は日本人だがアラビア語の名前をもつ。「ナビーラ」だ。意味は「貴族」とか「高貴」。この名前をアラビア語の先生から付けられた時、私は「なんて傲慢な人間だと思われているのだろう」とショックを受けた。なぜなら先生は1週間近く考えて名付けたからだ。

エジプトで青年海外協力隊員として活動し始めた頃、「名前は?」と聞かれ、答えるのが億劫だった。「貴族」「金持ち」と自分で言っているようで嫌だったのだ。でもその後、別の意味の“嫌”が待っていた。

ある時、「私の名前はアラビア語でナビーラです」と答えたら、エジプト人に爆笑された。「なぜ、笑うのですか?」と尋ねると、「だって、ナビーラってあなたのおばあちゃん世代の名前よ」。ナビーラという名前は日本でいう“花子さん的”な、オーソドックスだが最近はあまりないとのこと。「もっとかわいい名前があったのでは? アーヤ(奇跡の意)とかナダ(朝露の意)とか」と言われた。

話が少し脱線するが、イスラム教徒はコーランの中の言葉から選んで名前を付けるのが一般的だ。男性であれば「ムハンマド」や「アハマド」など預言者に由来した名前が多い。

自分の名前が「古臭い」と知った時のショックは相当なものだった。他の日本人ボランティアの名前が羨ましかった。しかしある時、エジプト人の同僚に言われた。「ナビーラってあなたにぴったりの名前よ。イスラム教では心やお金が豊かな人が貧しい人を助けたり、養ったりすることが良いこととされているの。それはつまり自分に余裕がないとできないこと。あなたのような豊かな心をもった人にはぴったりよ」と。

私が素晴らしいかどうかはともかく、名付けてくれた先生に感謝した。流行の名前ではない。でも、先生が気持ちを込めて付けてくれた名前に新しいも古いもないのだ。ボランティアとしてエジプトへ行く私にそういう人になって欲しいと思ってくれていたかどうかは定かではないが、心を込めて命名する行為は世界共通だと思った。