コロンビア・メデジンのハルディン・ボタニコに学ぶ、企業も人も環境に優しくなれるイベントビジネスの仕組み

「どんなに小さなことでも環境に貢献しましょう。大きなことにつながるから」と語るハルディン・ボタニコのカミーロ・ゴエス氏「どんなに小さなことでも環境に貢献しましょう。大きなことにつながるから」と語るハルディン・ボタニコのカミーロ・ゴエス氏

コロンビア第2の都市メデジンで暮らす250万人以上の市民にとって、憩いの場となるのが、民間企業が運営するハルディン・ボタニコ(植物園)だ。入場料は無料。運営費を稼ぐ手段の一つがイベント用のスペースを貸し出すこと。といってもイベントを主催するのはハルディン・ボタニコではなく、外部の団体だ。ハルディン・ボタニコで開かれるイベントは環境に配慮していることが前提。このビジネスの収益でハルディン・ボタニコをさらに発展させ、市民に還元する循環モデルがそこにはあった。

■イベントは年間120回

ハルディン・ボタニコの広さは東京ドーム3個分ほど。この中に、マグノリアやユーカリなど500種類およそ4000本の木が植えられている。この緑の環境を生かす形でイベントが開かれる。年間およそ120回だ。ハルディン・ボタニコはそのスペースを有料で提供することで、運営費をまかなう。

ハルディン・ボタニコで開かれるイベントはエコであることが条件だ。イベントにつきものなのがごみ。たとえば屋台を出すと、食べ残しや食器などのごみであふれかえってしまう。そうした事態を避けるためハルディン・ボタニコは、イベント主催者に対して環境に配慮するよう促す。

仕組みはこうだ。イベント主催者はハルディン・ボタニコに対し、予測されるイベント来場者数や来場手段、イベントで使う容器などの情報を提出する。ハルディン・ボタニコはコロンビアのIT企業conTREEbuteのソフトウェアを駆使し、もらった情報を分析、イベント開催時の環境負荷を算出する。算出結果をイベント主催者に知らせ、環境に負荷をかけた分、植樹などの自然への恩返しをするように促すという流れだ。

植樹は強制ではない。「この取り組みは主催者が環境のことをよく考えるきっかけになっている」と、ハルディン・ボタニコのコミュニケーション・マーケティング担当のカミーロ・ゴエス氏(31)は語る。

■木2本分の環境負荷のフェス

ゴエス氏が絶賛するイベントが「チャカルニャ・リビング・フェス」だ。2014年から1年に一度、夏至の日に開催され、参加者は料理を楽しんだり、踊ったり、アウトドア読書をしたり、とヒッピーのように過ごす。フェス参加者は車ではなく公共交通機関で来るため、排気ガスの出る量は減る。イベントで出るごみは、肥料をはじめリサイクルできるものばかり。「チャカルニャ・リビング・フェスの環境負荷(CO2換算)は木2本分で吸収できる量だ。来場者200~300人規模のイベントとして環境負荷は驚くほど少ない」とゴエス氏は胸を張る。

イベントの開催数は近年右肩上がりだ。5年前からは大型のコンサートも増え、2018年は16回を数えた。さらにたくさんのイベントを誘致するため、メデジン市役所の観光部と協力して、海外の企業などへPRする。国際会議などは室内で開かれることが多いが、ハルディン・ボタニコならきれいな花や豊かな自然に囲まれているのが強み。医学の国際シンポジウムや結婚式の場として使用されたこともある。

イベントスペースを貸すことで得た収益は、ハルディン・ボタニコの環境保全や生物の研究の資金に使われる。ハルディン・ボタニコ内にあるチョウの研究施設もそのひとつだ。「チョウの研究施設を見学する人々が『素晴らしい!』と感動する姿を見るたびに、とても誇らしい気持ちになる」とゴエス氏は喜ぶ。

ハルディン・ボタニコの入場料は無料だ。市民にとってハルディン・ボタニコを身近な存在とすることで、緑や環境に対する意識を高めることを狙う。メデジンは緑であふれた街。市民一人ひとりの意識があれば、緑を絶やすことなく今後も発展していくかもしれない。

ハルディン・ボタニコの中にあるチョウの研究施設には現在10種類350羽のチョウがいる

ハルディン・ボタニコの中にあるチョウの研究施設には現在10種類350羽のチョウがいる