【環境と開発の接点(9)】ベネズエラ人主婦に学べ、家庭でできるリサイクル品の作り方~驚きのアイデアを一挙公開!~

2007.09.01“すだれ”は短いもの、長いもの、もっと長いものの3種類がある。一番長いタイプは1本で四十数個の、その次のタイプはおよそ30個の、一番短いタイプでも15~20個の「ビールびんのふた」を使っている。すだれ全部ではおよそ7600個にもなる

途上国で暮らしていると時たま、手作りのおもしろいリサイクルの仕方に出くわすことがある。その斬新な発想に仰天することも。今回は、南米ベネズエラのマリパ村(エンジェルフォールと同じ州に位置する)で見つけたアイデア品を取り上げ、その真意に迫ってみたい。

■ビールびんのふたが「涼しげなすだれ」に!

毎日のように朝ごはんを食べる店がある。勤務先のベネズエラ環境省マリパ事務所から徒歩2分のエンパナーダ屋。エンパナーダとは、練ったトウモロコシ粉の中に肉などを詰めて揚げた料理で、例えるならば“大きなギョウザ”。ただ今回はそのエンパナーダが環境にやさしいとか、自然の素材を使っていておいしいとかという話ではなく、その行きつけの店が知る人ぞ知る(といっても人口3千人の村だが、数人の高校生いわく)「リサイクルハウス」だからなのだ。

店に入ってまずびっくりするのは、カウンターや壁代わりに垂れ下がっている「すだれ」。パッと見たところ違和感なし。いつもお腹ペコペコで行くこともあって、最初はまったく気がつかなかった。数回通ううちに「んっ」と思った。

「ひょっとしてこのすだれ、ビールびんのふたで作ったんですか?」

「うん、そうよ」

店の女主人のアンヘラ・ロドリゲスさん(40歳)がにこやかに答えた。

「わーすごいな。このふたはどうしたんですか? でもどうしてすだれを?」

「ビールびんのふたはいろんな店でいっぱい手に入るでしょ。隣の飲み屋でもらうこともあるし。きれいかな、とひらめいて作ってみたのよ」

「自分で?」

「うん、そうよ」

材料はびんのふたとロープの2つ。コストはロープ代だけ。作業もシンプル。ふたをロープに挟んでペンチでギュッと閉めていく。それで終わり。誰でもできる。

「どっかで見て、それをマネしたんですか?」と尋ねると、「100%オリジナルのアイデアよ。店をデコレーションするなんか安上がりの方法はないかな、とずっと考えていたの。2週間ぐらいで店中のすだれを全部完成させたわ」とアンヘラさん。

このすだれ、ほとんど同じふた(「レヒオナル・ライト」というブランドのビールをマリパの人は好んで飲む)を揃えているのでデザイン的にも統一感があって、見た目も悪くない。また手触りもゴツゴツしておらず、目をつぶれば、まさか「ふた」とは想像だにしないだろう。ユニークな発想とその有用さに脱帽だ。

さらに私が個人的に気に入っているのは、風が吹くとふたがぶつかり合い、「チャリンチャリン」と鳴るところ。風鈴のようなモノクロな音色を聞くと、熱帯のマリパも心持ちほんのちょっぴり涼しくなる。

■ビニール袋が「カラフルな箱」に変身!

驚きのリサイクルはすだれだけではなかった。店の中を注意深く観察すると、他にもいろんな工夫が隠されていたのだ。

テーブルの上に置かれた、紙ナプキンやソース類を入れる箱。どこかで買ってきたものだろうと思いきや、手作りだという。あまりに完璧な出来栄えで、教えてもらわない限り、ちっとも気づかない。

素材を尋ねると、枠は針金、それをカバーする繊維に見えたものはなんとビニール袋だった。「ほう、こんなリサイクルもあるのか」とその意外さに感心してため息をついていると、アンヘラさんは言った。

「買い物をしたときにもらったビニール袋がいっぱいあるでしょ。それを使うの。ビニール袋を縦に裂いて、針金に巻きつけていくのよ」

小さな店しかないマリパでも、何かを買うと決まってビニール袋はくれる。しかもそのビニール袋、弱すぎてすぐに破けるときているから、二重三重にする。だから消費量は日本以上。耐久性がゼロだけにこれといった使い道もないし、ビニール袋なんて穴が開いてしまえばただのごみ。だから路上にいっぱい落ちている。なんせリサイクルシステムは存在しないわけだし。

これ以外にもこの店には、リサイクルとは違うが、“なにげなく環境にやさしい取り組み”があった。それはエンパナーダには欠かせないソースを自分で作っていること。

エンパナーダを食べるときは通常、タバスコのような辛味を加えるサルサ(「ピカンテ」と総称される)や、マヨネーズをベースにニンニクやハーブなどを混ぜたタルタルソースに似たもの(「グアサカカ」と呼ばれる)などをかける。マリパのエンパナーダ屋をみると、グアサカカはほとんどの店が自分で作っているものの、ピカンテはガラス詰めの既製品を買ってくるのがほとんどだ。

アンヘラさんの店は、グアサカカはもちろん、ピカンテ(チリ、たまねぎ、にんにく、ピーマンなどが材料)まで自家製。これがまたさっぱりしていて、油っぽいエンパナーダにとてもよくあう。このピカンテがおいしいから、そもそも私はこの店に通い始めたのだ。

ではなぜ既製品が環境に悪くて、自家製だと良いのか。

ピカンテはだいたい、エンパナーダの売れ行き次第だが、1~数週間で1本は使い切ってしまう。既製品を買ってくれば、そのたびにガラスびんがごみとして残る。びんの回収もないマリパでは、これらはすべて最終的にサバンナに捨てられる。仮に1週間に1本消費するとして年間52本。エンパナーダを食べさせる店はマリパで5軒ぐらいあるから、つまりこれは年間260本の空きびんがサバンナ行きになることを意味する。

ピカンテを自分で作るということは、必然的に中身を詰め替えるので、びんのごみのリデュースにつながるのだ。

■缶ビールのプルタブ製「ベルト」と「ブレスレット」を売り出す!

アンヘラさんのすごさはまだまだ終わらなかった。

最近になって、なんと缶ビールのプルタブを材料に、「ベルト」と「ブレスレット」まで作り始めたのだ。今度はれっきとした商品。これまでは「お金をかけずに店を飾る」という目的だったが、「お金をかけずに売り物を作る」ことに一歩踏み込んだわけだ。

値段はベルトで900円(オフィシャルな為替レートで計算。ブラックマーケットのレートを適用すると500円程度になる)、ブレスレットは300円(ブラックマーケットのレートでは200円以下)。ベネズエラの物価を考えれば、子どもが気軽に買えるものではないし、そんなに需要があるとも思えないが、そこはアンヘラさん。「ベルトとブレスレットはコンビネーションにしたのよ」と工夫を忘れない。

材料は、ブレスレットはプルタブとひもだけ。ベルトはそれに加えて、前で留める部分のボタン飾りを買う。ただ作業はけっこう細かい。ひとつひとつのプルタブにひもを通していかなければならず、編み物をするときのような辛抱強さが必要。私も挑戦してみたが、1つプルタブを付けただけで「あっ、もういいや」と放り出してしまった。

「(田舎のマリパは何もすることがないので)暇つぶしみたいなものなのよ」とアンヘラさんは黙々と手を動かしていく。11歳の娘、ジェリサイさんも楽しそうに手伝う。親子のコミュニケーションの場にもなっている。そこに私が「プルタブで鍋敷きは作れませんか? 買いたいんだけど‥‥」と割り込むと、「無理だわ。ひもが焦げてしまうもの」と一蹴されてしまった。

口が達者な典型的なベネズエラ人と違って、かなり控えめのアンヘラさん。環境問題に関心があるわけではないし、専門知識があるわけでもない。ごみの量を減らそうと本気で考えているふうでもなさそうだ。口癖は「趣味だから」「好きだから」「いっぱいあるから」と、あくまで自然体。“環境にやさしい暮らし”とは本来こんなものなのだろう。

アンヘラさんの影響を受けてか、私も以前に増して、ミネラルウォーターや既製のソースなどは極力買わないようになった。購入する前に、その容器がリユースしやすいかどうかをチェックする。砂糖や塩などの調味料は空きびんに詰めて使っている。平坦なサバンナがごみの山に変わってほしくないし‥‥。でも個人レベルの容器リユースには限界がある。

はっきり言って手作りのリサイクルを一生懸命やったところで、ごみ問題がなくなるわけではない。根本的解決にはやはり、製造業者を核にしたリサイクルシステムの確立が必要不可欠。ただその機運を醸成していくうえで、アンヘラさんのような“モノを大切にする気持ち”と“新たな命を吹き込む姿勢”をみんなが共有することができれば、ここマリパでもいつの日か、環境ムーブメントが沸き起こるかもしれない。(続き