【環境と開発の接点(9)】ベネズエラ人主婦に学べ、家庭でできるリサイクル品の作り方~驚きのアイデアを一挙公開!~

2007.09.01“すだれ”は短いもの、長いもの、もっと長いものの3種類がある。一番長いタイプは1本で四十数個の、その次のタイプはおよそ30個の、一番短いタイプでも15~20個の「ビールびんのふた」を使っている。すだれ全部ではおよそ7600個にもなる

缶ビールのプルタブ製「ベルト」と「ブレスレット」を売り出す!

アンヘラさんのすごさはまだまだ終わらなかった。

最近になって、なんと缶ビールのプルタブを材料に、「ベルト」と「ブレスレット」まで作り始めたのだ。今度はれっきとした商品。これまでは「お金をかけずに店を飾る」という目的だったが、「お金をかけずに売り物を作る」ことに一歩踏み込んだわけだ。

値段はベルトで900円(オフィシャルな為替レートで計算。ブラックマーケットのレートを適用すると500円程度になる)、ブレスレットは300円(ブラックマーケットのレートでは200円以下)。ベネズエラの物価を考えれば、子どもが気軽に買えるものではないし、そんなに需要があるとも思えないが、そこはアンヘラさん。「ベルトとブレスレットはコンビネーションにしたのよ」と工夫を忘れない。

材料は、ブレスレットはプルタブとひもだけ。ベルトはそれに加えて、前で留める部分のボタン飾りを買う。ただ作業はけっこう細かい。ひとつひとつのプルタブにひもを通していかなければならず、編み物をするときのような辛抱強さが必要。私も挑戦してみたが、1つプルタブを付けただけで「あっ、もういいや」と放り出してしまった。

「(田舎のマリパは何もすることがないので)暇つぶしみたいなものなのよ」とアンヘラさんは黙々と手を動かしていく。11歳の娘、ジェリサイさんも楽しそうに手伝う。親子のコミュニケーションの場にもなっている。そこに私が「プルタブで鍋敷きは作れませんか? 買いたいんだけど‥‥」と割り込むと、「無理だわ。ひもが焦げてしまうもの」と一蹴されてしまった。

口が達者な典型的なベネズエラ人と違って、かなり控えめのアンヘラさん。環境問題に関心があるわけではないし、専門知識があるわけでもない。ごみの量を減らそうと本気で考えているふうでもなさそうだ。口癖は「趣味だから」「好きだから」「いっぱいあるから」と、あくまで自然体。“環境にやさしい暮らし”とは本来こんなものなのだろう。

アンヘラさんの影響を受けてか、私も以前に増して、ミネラルウォーターや既製のソースなどは極力買わないようになった。購入する前に、その容器がリユースしやすいかどうかをチェックする。砂糖や塩などの調味料は空きびんに詰めて使っている。平坦なサバンナがごみの山に変わってほしくないし‥‥。でも個人レベルの容器リユースには限界がある。

はっきり言って手作りのリサイクルを一生懸命やったところで、ごみ問題がなくなるわけではない。根本的解決にはやはり、製造業者を核にしたリサイクルシステムの確立が必要不可欠。ただその機運を醸成していくうえで、アンヘラさんのような“モノを大切にする気持ち”と“新たな命を吹き込む姿勢”をみんなが共有することができれば、ここマリパでもいつの日か、環境ムーブメントが沸き起こるかもしれない。(続き

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