予防接種の費用は10年前の28倍に! 国境なき医師団は「製薬会社は値下げを」

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4月20~28日は「世界予防接種週間」。24~25日にはアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで「世界ワクチン首脳会議」(主催:潘基文国連事務総長、ビル・ゲイツ氏、ムハンマドUAE皇太子)が開かれた。国境なき医師団(MSF)はこれに先立ち、「新しいワクチンの価格が高いゆえに、途上国の子どもたちが予防接種を受けることが難しくなっている」との声明を発表し、ワクチンの価格を引き下げるよう製薬会社に呼びかけた。

MSFによると、子ども1人当たりの予防接種費用はこの10年で28倍も値上がりしたという。2001年は、6つの病気を対象とする予防接種費用は1.4ドル(約137円)だった。ところが現在は、11種類のワクチンを含むパッケージで38.8ドル(約3870円)だ。

予防接種の費用が急騰したのは、肺炎球菌とロタウイルスに対する2種の新しいワクチンが加えられたことが大きい。この2つのワクチンは高価で、パッケージ価格の75%を占める。

いずれのワクチンも、米ファイザー、英グラクソ・スミスクライン、ドイツのメルクの3社しか生産していない。こうした独占状況が価格を高止まりさせており、たとえば、はしかワクチンが0.25ドル(約25円)であるのに対し、肺炎球菌ワクチンは最低でも21ドル(約2100円)とその高価さは際立つ。

「途上国が負担できるような価格を設定せずに、企業利益を優先させる製薬会社の姿勢が問題だ。このままでは、いつの日か、ワクチンを購入するための途上国への資金援助が打ち切られる可能性が高い。そうなると途上国政府は、(すべてをまかなえないので)どの病気から子どもの命を守ろうかという『選択』を下さなければならなくなる」とMSFは懸念する。

今後10年間の予防接種を見据えた世界的な運動「ワクチンの10年」計画には、570億ドル(約5兆6900億円)が投じられる見通しだ。だがその50%以上はワクチン購入の費用に充てられるという。

新しいワクチンを商品化するまでには多大な研究開発コストがかかるのは事実。ただその一方で、公的資金でより多くの子どもたちに予防接種を受けさせるには、ワクチン価格と生産コストの差をもっと縮める必要があるといえそうだ。