インドの中流家庭に流入するメイド、「児童労働の規制」は機能せず

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少女は14歳のとき、高給をもらえるメイドとして、東部インドの寒村からニューデリーに連れてこられた。しかし、仕える先の中流家庭では、事実上奴隷のように無給で働くことを強要される。就職を斡旋した業者に口ごたえすると、殴られて性的暴行を受け、「もし逃げたら、家族全員を殺し、家を燃やす」と脅された。

1月20日付ワシントンポストによると、急成長するインド都市部の中流家庭には、メイドとして地方から連れてこられる少女が後を絶たない。少女たちは、法定最低賃金である125ドル(約1万1000円)以下の月給で、1日15時間以上働かされる。そのほとんどが、家族から離され、虐待され、奴隷のように扱われている。一部には、性的虐待を受ける少女もいる。

ニューデリーのバス内で2012年12月、若い女性が集団でレイプされるという事件が起き、市民の怒りが爆発した。だが、まだ顕在化していないものの、児童労働の問題も「女性のレイプ」と並んで深刻だ。社会の暗黙の了解や政府の無関心から、子どもの人身売買や虐待のネットワークは広がっているという。

インドの中流家庭の多くは、貧困層の子どもを雇用することで、その家族の生活を助けてやっていると思い込んでいる。ニューデリーの条例はインドで最も厳しく児童労働を規制している。2009年以降、18歳以下の子どもを危険な仕事に従事させた場合、保釈なしで禁固刑が科される。しかし、この法律はほとんど無視されており、両親や人権活動家の訴えを受けて、警察が未成年労働者の「救出作戦」に乗り出すことはめったにない。

インド政府の発表によると、約500万人の子どもが国内で雇用されている。しかし、人権活動家は、実態はその10倍に上ると考える。インド全土で400万件にもおよぶ家庭内の児童労働を斡旋するため、ニューデリーとその郊外だけで4000以上の事業所が運営されていると、インド内務省は推定している。(今井ゆき)