【yahman! ジャマイカ協力隊(10)】日本人は“魔法使い”? ググって活動のネタを探す 

0311写真1“Tシャツエコバック”を作っている小学生。線に合わせて慎重にはさみを使う

■古いTシャツがエコバックに変身

「ハラ(私のこと)は本当にクリエイティブね。すごい。魔法使いみたい!」

青年海外協力隊員として活動するジャマイカで小学校を訪問すると、私が作った「新聞紙のブローチ」や「レジ袋のポーチ」、「ペットボトルのビーズ」などを見たジャマイカ人教師は決まって、こう感嘆の声を上げる。

私は正直、褒められて悪い気はしない。幼いころからものづくりが好きだったし、器用なほうだ。でも私が魔法使いといわれるには“秘密”がある。といってもそれは「ググる」(グーグルを使ってインターネットで検索する)ことだが。

活動先であるジャマイカのNGO「4-Hクラブ」は月に1回、地元の学校の教師らを集めた「リーダーズミーティング」を開く。この中には、授業で使えるアクティビティのトレーニングもメニューに含まれており、1月は、私がトレーニングの講師を務めた。

ちなみに2012年は、環境にやさしい生活チェックリストと、指編みで作るアクリルたわし、廃油で作る石けんを紹介して好評を得た。

今回は何を紹介しようかな、と悩んだ時に頼るのが、インターネットだ。「リサイクル工作」と検索すればさまざまな事例がヒットする。英語で検索すればさらに多くの事例が見つかる。私が今、子どもたちに作り方を教えているリサイクル工作も、インターネットで得たアイデアが元になっている。

私は、今回もググった。ジャマイカ人が知らない、新しく、活用できるアイデアを検索し、紹介するために。たどり着いたのは古くなったTシャツで作るトートバッグだった。プラスチックの袋を大量に消費する代わりに、自分で作ったエコバッグを使おうと提案した。意外性があったのか、トレーニング中に写真撮影までする教師も現れた。

ググるという方法は言うまでもなく、多くの日本人もやっている。インターネットは世界中から、個々が求める情報を探し出してくれる。私がジャマイカ人にアクティビティのネタをどんどん提供できるのも、インターネットのお蔭だといっても過言ではない。

■ググれないジャマイカ人

私の目には、インターネットのそういった恩恵をジャマイカ人は受けていないように映る。でもそれは、インターネットの普及率の低さだけが原因ではないと思う。

私が暮らすジャマイカ東部のポートアントニオには、パソコン教室が設置された小学校も増えている。街中にはインターネットカフェもある。携帯電話網を使ったインターネットも、1日単位で利用可能だ。図書館ではパソコンを無料で使え、実際に、授業が終わった子どもたちが利用している。コンピュータ技術を教える別の協力隊員も教育省ポートランド事務所に派遣され、ICT(情報通信技術)を活用した教育の普及に努めている。

ジャマイカに赴任した当初、驚かされる出来事があったことを今でも覚えている。NGOの同僚(秘書)から「ヤフーメールの受信箱にあるメールを1通だけ消したい。どうやったらいいの?」と聞かれたのだ。

私は、あまりに簡単な質問に耳を疑ったが、やり方を教えてあげた。すると彼女は、私がコンピュータに詳しい人間だと判断したらしく、「メールの署名を変えたい」「ワードの改行がおかしい」「エクセルで一行挿入したい」「文章をコピーして貼り付けたい」――など、ことあるごとに聞いてくる。ショートカットを披露すれば、私がまるで魔法使いであるかのように感動してくれる。

これ自体は大した話ではないが、私はふと思った。同じ問題に直面したら、おそらく、私を含めた日本人の多くはググると思う。インターネットで答えがすぐに見つかるからだ。

このプロセスはつまり、「問題に直面」→「検索」→「情報収集」→「解決」となる。自分の力では解決できないことはインターネットの力に頼る。

しかしどうやらジャマイカには、インターネットに頼るよりも、情報をもつ人に頼るという文化が根付いている。またコミュニケーションの主な手段も電話で、メールはあまり使わない。私の同僚は書類1枚を渡すために車で何十分もかけて学校を訪問する。メールを送っても、返ってこない場合があるからだという。

日本などで指摘されるインターネットの弊害はともかく、インターネットの利便性を使いこなすにはジャマイカ人にとってまだまだ時間がかかりそうだ。ということは、私はまだ当分、“魔法使い”としてジャマイカで役に立てるのかもしれないなと思った。(ジャマイカ=原彩子)