シャーガス病の患者を81万人に半減させたJICAの取り組み、協力隊員が下支え

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「中米の風土病<シャーガス病>との闘いと青年海外協力隊―協力隊員は現場で何を見て、どう行動したのか」と題するセミナーが4月11日、都内の国際協力機構(JICA)地球ひろばで開催された。このセミナーは、書籍『中米の知られざる風土病「シャーガス病」克服への道』の発売を記念したもの。

セミナーでは、この本の著者で、JICA中米シャーガス病対策広域アドバイザーの橋本謙氏を司会に、山内志乃、溜宣子、小笠原禎、江越健太郎、谷口翠の5氏がパネリストとして自らの体験を語った。6人はいずれも協力隊のOB・OG。

シャーガス病とは、吸血性カメムシの一種「サシガメ」が病原虫を媒介する感染症。ホンジュラスやグアテマラなど中米で主に発症するのが特徴だ。潜伏期(1~2週間)・急性期(6~8週間)・慢性期を経て、5~20年後に心筋症または巨大消化管症(巨大食道・巨大結腸)で死ぬこともあるという。感染初期に効く治療薬にはNifurtimoxとBenznidazoleの2つがあるものの、副作用があるうえに、薬局で売っていないため、アクセスが難しい。

JICAは1990年代から、中米でシャーガス病対策に着手。この取り組みが奏功して、推定患者数が90年代の177万人から2006年には81万人まで半減した。新規の感染者数も6万2000人から9000人へと激減している。

こうした成果を下支えしたのが中米各地の協力隊員だ。隊員らは、地元のスタッフと一緒に訪問調査を実施したり、子どもをはじめ住民を啓蒙したり、活動データの管理を手伝ったりした。

大学を卒業してすぐにホンジュラスへ派遣された溜氏は、啓蒙活動の一環として演劇をした。「劇は好評で、やりがいもあった。だが一過性の活動ではないか、と悩んだ」。2年という限られた任期の中で、継続性のある成果を出すのは難しいのが現実だ。

パネリストの5人は帰国後、協力隊の経験を生かし、さまざまな仕事に就いている。小笠原氏は、オランダ留学や開発コンサルタントを経て、JICAのジュニア専門員に。また谷口氏は新薬コーディネーターとして働くかたわら、医療通訳サークルにも参加。「日本でできる国際協力を続けていきたい」と話した。

JICAは毎年、約80カ国に約1400人の協力隊員を派遣している。2013年度春募集の応募締め切りは5月13日。(高橋亜由美)