「経済の復興」か「心の復興」か? アチェを視察した岩手の高校生らが討論

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国際NGOグッドネーバーズ・ジャパンは4月21日、「三陸の高校生、インドネシアをゆく~故郷の『復興』を探る旅~」の報告会を岩手・釜石で開いた。

ベネッセ募金の支援を受け、グッドネーバーズ・ジャパンが主催したこのプログラムは、2012年11月~13年4月に、東日本大震災の被災地である岩手県の高校生を対象に実施した研修。学習・交流を通じて、東北の復興を担う次世代リーダーを育成するのが目的だ。プログラムの目玉として、16人の高校生は、04年に起きたインドネシア・スマトラ島沖地震(死者およそ22万人)の被災地アチェ州を訪問した。

渡航前の事前研修では、高校生らは復興のゴールについて「仮設住宅がなくなること」「町並みが元通りになること」など、ハード面の充実を挙げる声が多かったという。

ところが帰国後の報告会では、「被災前の自分より幸せになること」「人々のつながり、みんなの笑顔」「被災者が未来への希望を感じること」など心の復興を重視する意見が百出。報告会で開かれた公開ディベートでも、高校生らは「三陸鉄道が2年ぶりに開通し、喜ぶ人がいっぱいいた」「経済の復興というのは特定の人、コミュニティに加われる人に目を向けている。陰にいる人にもっと目を向けるべき」「被災地に戻ってきたいと思える町づくりが重要」などと述べ、アチェでの体験が復興についてより深く考えるきかっけになったことをうかがわせた。

生徒らのディベートを見守っていた保護者らは、理路整然とした子どもたちの発言に感心しながら、「漁業が元に戻るには施設が必要。でも箱モノだけが戻ればいいのかといえれば違う。心が伴わないと人は戻ってこない。それをやるのは若い人たち」とコメント。高校生らに、心の伴った経済復興への期待を寄せた。

報告会の最後に、それぞれの高校生らは、今後の自分のアクションプランを発表。「自分の経験を発信する」「復興庁や市役所に、復興状況とその復興の定義について聞く」「(インドネシアに行って心のケアの必要性を改めて感じたので)心理カウンセラーになる」などと決意を述べた。

また報告会とは別に、今回の研修の中で、生徒らは、被災地を観光地化(ディザスターツーリズム)すべきかどうかについても意見を戦わせた。被災地でも震災の記憶が風化しつつあるなか、東日本大震災をどう残し、語り継いでいくかは大きなテーマとなっている。

アチェでは、「津波ミュージアム」をはじめ、震災の傷跡をあえて残し、展示されている。ただそれは、死者・行方不明者を悼むものというより、観光的な色合いが強くなっているという。ただ見方を変えれば、何も知らない外部の人が、当時の被災のすさまじさがわかるというメリットもある。

これについて生徒の間では、「次世代に津波の経験を残していきたい」「何も残さなかったら、毎年3月11日の黙とうで思い出すだけで、時間が経てば薄れてしまう。観光地化してでも、もっと多くの人に来てもらい、防災をしっかりしてもらうべき」といった賛成意見もあれば、「アチェの津波ミュージアムのような施設があっても、本当の怖さがわかるとは思わない」「伝える場所があっても震災は風化する。過疎化で人がいなくなったら、そこから先は何もないではないか」という反対意見も聞かれた。