アフリカと日本のNGO、モザンビークでJICAが推進する農業開発は「土地収奪だ」

DSC_0028モザンビーク全国農民連盟(UNAC)のビセンテ・アドリアーノ事務局長(写真右端)

第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の閉幕を受け、アフリカと日本のNGOは6月3日、パシフィコ横浜で記者会見した。TICAD Vの成果について「アフリカの開発に日本政府が向こう5年で3兆2000億円の支援を約束したこと」「人材育成の拠点をアフリカ10カ国に設置すること」「アフリカ政府主導のもと、民間セクターがけん引する経済モデルを提示したこと」「UHC(保健サービスへの普遍的アクセス)の推進を掲げたこと」などを評価する一方で、国際協力機構(JICA)がモザンビークの熱帯サバンナを一大農地に変えようとする巨大プロジェクト「プロサバンナ」が土地収奪につながっている、と警告した。

会見に出席したモザンビーク全国農民連盟(UNAC)のビセンテ・アドリアーノ事務局長は「プロサバンナの開発規模は1000万ヘクタールにも及び、400万人以上の農民に、立ち退きなどの悪影響を与えている。この事業は、モザンビークの小農に対する抑圧、迫害につながっている」と問題視した。

1000万ヘクタールとは、北海道(780万ヘクタール)と四国(180万ヘクタール)を合わせた面積よりも大きい。モザンビークの国土は日本の2倍強だが、それでもいかに強烈なインパクトがあるかは容易に想像できる。

問題なのは、この広大な土地で栽培されるのは、日本に輸出する商品作物であることだ。アドリアーノ事務局長は「日本の食料安全保障は達成できるかもしれない。だが、モザンビークの農民のためにはなっていない。政府開発援助(ODA)を使った日本の利益追求はやめるべきだ」と警告。モザンビーク政府に対しても「アフリカは売り物ではない。数百万、数千人がその土地に住んでいることを考えるべき」と、人権を無視した資源活用政策を見直すよう訴えた。

このほか、TICAD V NGOコンタクト・グループの稲場雅紀コーディネーターは「今回のTICADは、これまでと比べ、CSO(市民社会組織=NGO)の参加の枠が狭められた。これが不満。本会議でも十分な席数が用意されなかった。CSOを開発パートナーと位置付ける『イスタンブール原則』にも反している」と指摘。今後は、TICAD Vのコミットメントが、プロサバンナのように、アフリカの人々に問題や脅威を引き起こさず、適切に遂行されているかどうかを監視する責任・役割がCSOにはある、と述べた。

さらに会見後の質疑応答では、日本在住14年のアフリカ人男性が立ち上がり、「TICADが93年に始まって20年。いまだに、日本でも、アフリカでも一般の人に知られていない。(TICADの開催頻度である)5年に1度、アフリカ政府の代表が日本に来て、援助を求める行為を恥ずかしく思う。これについてCSOの役割をどう考えるか」と質問した。

これに対し、ベナン出身で、アフリカ市民協議会(CCFA)のグスターブ・アッサー代表らは「TICADは政府間の会議だから知られていないのでは。CSOをもっと含めれば、一般人も知るようになるのでは」「CSOにとってコミュニケーションは依然として大きな課題」などと答えた。