食の安全保障を考える、国連フォーラムが勉強会

0610国連フォーラム、20130420-IMG_6929国連食糧農業機関(FAO)対国連連絡事務所の村田敏彦・連絡調整行政官

国連フォーラムは、米ニューヨークで、「国連機関会議と政府間会議の交渉、駆け引きの現場から」のテーマで勉強会を開いた。講師は、国連食糧農業機関(FAO)対国連連絡事務所の村田敏彦・連絡調整行政官。村田氏はこれまで、FAOを代表して政府間や国連の会議などに出席してきた。今回の勉強会で村田氏と参加者らは、世界を悩ます食糧問題をはじめ、国連のあり方や課題について議論した。概要は以下の通り。

■「飢餓」と「飽食」が共存

世界人口が増加すると、食糧の生産量は当然、増やさなければならない。世界の食糧生産量はその需要を賄うことができるとの統計もあり、これに基づけば、食糧が均等に供給さえされれば、飢餓に苦しむ人はいなくなるはずだ。

しかし食糧の保存・分配方法や輸送費用などがネックとなって、実現できていないのが現状。仮にこうした障壁が技術革新で解決されたとしても、各国の政治的な利害関係から、効率的な生産・分配が妨げられるという懸念もある。

飢餓が依然として存在する一方で、飽食の問題もある。先進国・途上国にかかわらず、偏った栄養摂取が引き起こす肥満は急増している。FAOは、各国の穀物需給統計をウェブサイトで提供したり、ポスト2015年の開発アジェンダを通じ、世界全体を視野に入れた食の安全保障に取り組んでいる。

■決議はベストの解決策ではない

勉強会では、国連内で開催される会議の性格についても議論した。政府間会議と国連機関会議はそれぞれ出席者の異なる会議だが、こうしたことから同じ議題を取り上げても、議論の視点が異なることはしばしばある。

国連は、193の加盟国と国連事務局組織で成り立っている。したがって、政府間会議と国連機関会議で相反する提案が出されることはない。最近はソーシャルメディアの発達で、誰もが簡単に提案・発言できるようになったため、市民社会組織(CSO)の意見も国際会議に反映されやすくなってきている。

ポスト2015年の開発アジェンダのように、政府、国連機関の双方が議論していく場合もある。こうした会議は、審議や駆け引きに時間と手間がかかることが多い。また、会議の果実として採択される「決議」は、多数の交渉参加国が討議を重ねた結果であるため、どの交渉参加国もが同じ程度の満足と不満を抱えた結果に落ち着くこととなる、という裏の事情もある。

■国連職員に日本人ももっと応募を

勉強会ではさらに、国連でのキャリア開発も議題に上った。国連職員への日本人志願者が減少していることについて、村田氏は、国連職員の採用条件が厳しいことと、不安定な社会経済情勢の中で、日本の若者がリスクを負いにくくなっていることをその理由として指摘した。

「国連では、背景や国籍が違う人たちと出会い、国を超えて学べるという良さがある。リスクばかりに目を向けるのではなく、自分にとってプラスになる部分を積み重ね続けることで、国連での仕事はさらに魅力的になる」と村田氏は語り、もっと多くの日本人が国連職員に応募することに期待を込めた。(国連フォーラム勉強会担当・羅 佳宝)