2014年上期の庇護申請は24%増の33万7000人、シリア・イラクの紛争で難民増加が背景

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が9月末に発表した報告書「先進諸国における庇護申請の暫定統計」で、先進国に庇護を申請した難民などの数は2014年上期に33万700人にのぼったことがわかった。これは前年同期から24%の増加。13年下期の32万8100人と比べても多い。シリアやイラクでの紛争、アフガニスタンやエリトリアなどの政情不安が背景にある。

庇護申請者の出身国の内訳をみると、シリアが4万8400人で全体の15%を占めた。シリア人の庇護申請は、前年同期は1万8900人だったことから、その数は2.5倍と膨れ上がった。この傾向は、2011年1月から続くシリア紛争が泥沼化していることを如実に表している。

イスラム過激派「イスラム国」との紛争が激化するイラクからの庇護申請者は2万1300人と、シリアに次ぐ2番目に多かった。以下、アフガニスタン(1万9300人)、エリトリア(1万8900人)が続く。

庇護申請を受けた国は、ドイツ、米国、フランス、スウェーデン、トルコ、イタリアの6カ国で全体の3分の2を占めた。庇護申請の数が減ったのは、ハンガリー(前年同期比58%減の4800人)、ポーランド(同65%減の3300人)、オーストラリア(同20%減の4600人)など。

UNHCRは、庇護申請が下期もこのペースで増え続けると、14年通年の庇護申請者は70万人に達するのではと憂慮する。その場合、1990年代の旧ユーゴスラビア紛争以来20年ぶりの水準になるという。

アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は「紛争への具体的解決策がなく、庇護を求める人が増え続ける深刻な現状を国際社会は認識し、今後に備える必要がある。増え続ける難民に対し、このままでは人的・物的貢献や庇護へのアクセスを保証することができない」と訴える。

この報告書は、欧州、北米、アジア太平洋地域の44カ国から集めたデータを元に作成したもの。先進44カ国への庇護申請数は、紛争による強制移動の現実を反映している。難民や国内避難民など、家を追われた人の数は2013年末時点で5120万人。