中国の「拷問器具産業」が急成長、アフリカへの輸出も

アムネスティ・インターナショナルは「中国における拷問器具取引と弾圧」 と題する報告書を発表し、このなかで、中国の「拷問器具産業」が急成長している実態を明らかにした。今回の報告は、英国の軍・警察装備関係の調査会社オメ ガリサーチと共同で調べ、それをまとめたもの。中国の拷問器具産業について「市民に対する弾圧が続くなか発展してきた」と危惧している。

報告書によれば、中国では現在、国営の大企業から民間の中小企業まで130社 以上が「拷問器具」を製造・販売している。拷問器具とは、電気ショック棒、スパイク(突起)棒、首の拘束具、重し付き足かせ、手錠、警棒、高機能なスタン ガン、催涙スプレーなどだ。催涙ガスや警棒、手錠などは合法的な使用が認められているものの、拷問に不当に使われるケースも少なくない。

アムネスティとオメガが調査のなかで確認できた事実は「直接接触型ショック棒を製造するのは83社、うち29社は輸出していること」「スパイク(突起)付き棍棒を製造するのは21社で、うち7社が輸出していること」「17社が重し付き足かせを製造し、うち6社が輸出向けに製造していること」「32社が指錠を製造、うち15社が輸出用に製造していること」などだ。

中国には、拷問器具を市場から締め出したり、警察などが拷問器具を使わないようにする適切な制度がない。こうした事情から、逮捕した者に対してショック棒で 電気ショックを与えたり、手錠や足かせでからだを拘束して殴ったりすることが絶えない。チベットやウイグルのデモ参加者を力で抑え込む際にもさまざまな拷 問器具が用いられる。

中国製の拷問器具はまた、この10年 間で海外への輸出も拡大しているという。アムネスティは、具体的な量や供給先についての公式データはほとんどないが、中国企業から得た情報や展示会の中国 企業参加数が増加している事実、またメディアのレポートや他国での中国製器具の使用写真などから、世界シェアは上がっている、と推測する。

拷問器具輸出の例を挙げると、中国は2008年、国連による包括的武器禁輸措置がとられていたリベリアに対し、催涙ガスや手錠、電気ショック棒を輸出。また2011年2月には、選挙準備期間中で政情不安の、しかも警察が深刻な人権侵害を侵している疑いがもたれていたウガンダに、放水砲や催涙ガス、トウガラシ・スプレー発射装置付きの装甲車が輸出されたことがわかっている。こうした器具は、反政府運動に対する暴力的な弾圧に使われた。

さらに2009年、深刻な政治的混乱にあったマダガスカルに、催涙ガスやゴム弾発射装置など暴徒鎮圧用の武器を輸出した。そのほとんどは、平和的な反対運動に対する暴力的な弾圧に使われたという。

アムネスティとオメガはかねて、拷問器具の製造・輸出を禁止すべきと主張してきた。欧州連合(EU)は2005年、特定の拷問器具の製造・輸出を禁止。また2013年の国連総会は、各国が拷問器具の売買を阻止するために同様の措置を講じるよう呼びかけている。