世界人口の7割超が「権威主義体制」下で暮らす、ヒューマン・ライツ・ウォッチが警鐘

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の『世界報告書2026』。世界100カ国以上の人権状況を網羅する

国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、世界100カ国以上の人権状況を記録した『世界報告書2026』を公表した。この中でトランプ米大統領からの圧力と、中国・ロシアによる継続的な切り崩しで国際秩序が押しつぶされつつあると警告した。世界人口の72%がすでに権威主義体制の下で暮らすなど、民主主義の水準は1985年の水準にまで後退した。

「力こそ正義」で国際秩序が崩れていく

2025年から2026年初頭にかけてトランプ政権は国連人権理事会と世界保健機関(WHO)からの脱退をはじめ、66の国際組織・プログラムからの撤退を表明した。この結果、子ども、高齢者、LGBTといった性的少数者、女性、人権活動家への支援を担ってきた対外援助プログラムが大幅に削減されることに。

トランプ政権はこれに加えて、国際刑事裁判所(ICC)の検察官や裁判官に制裁を科し、国際法を「必要としない」とまで公言した。

ロシアもまた、ICCの検察官と裁判官8人に対し、彼らが欠席のまま、禁錮刑を言い渡した。国際司法機関の権威を意図的に損ねるもので、報告書はこれを「力こそ正義という新たな世界秩序への移行の表れ」と警戒する。

スーダンでいまも民族浄化続く

人権侵害の例として報告書は、東アフリカのスーダンを取り上げた。スーダンは現在、国軍とアラブ系準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)による内戦のさなかだ。

国軍とRSFの前身のアラブ系民兵組織は、2003年から2020年ごろまで続いたダルフール紛争で共闘し、アフリカ系住民を大量虐殺した。ところが紛争が終わって両組織を統合しようとしたところ、どちらが主導権を握るのかをめぐって激しく対立。2023年から内戦になった。2025年9月時点で1180万人以上の避難民(国内避難民740万人、近隣国への難民420万人)を出すなど、世界最悪の人道危機となっている。

内戦に乗じてRSFは2025年も、アフリカ系住民に対する大規模な殺害とレイプを繰り返した。HRWはその行為を「再度の民族浄化」と断定する。

さらに深刻なのは、米国の同盟国であるアラブ首長国連邦(UAE)がRSFに軍事支援を提供している証拠があることだ。UAEはトランプ政権と数十億ドル(数千億円)規模のディールがあるため米国はこの問題に目をつむっている、とHRWは批判する。

ダルフール紛争で米国とNGOが国際的な結束をもたらしたのとは対照的に、今回は沈黙が支配する。

ガザでイスラエルがジェノサイド

パレスチナ自治区ガザのケースも残虐だ。パレスチナのイスラム組織ハマスが2023年10月にイスラエルを攻撃して以来、イスラエル軍は報復として6万9000人以上のパレスチナ人を殺した。ガザの住民の大多数も強制退避させた。

HRWはこれを「ジェノサイド・民族浄化・人道に対する罪にあたる」と指摘する。

だがトランプ政権はほぼ無条件にイスラエルを支持し続けている。2025年の2月には、ガザを「パレスチナ人のいない中東のリビエラ」にするとの計画をぶち上げた。HRWは「これは民族浄化に等しい」と批判する。

ガザだけでなく、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸でもイスラエル軍によるパレスチナ人の住宅の取り壊しや人道援助の不当な制限は続く。

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