アラブ諸国の労働者の3人に1人が「外国人」、ILOが統計

アラブ諸国では労働者の4割近くが移民だ。また世界規模で進む高齢化社会を支えるのも移民だ――。

国際労働機関(ILO)はこのほど、移民労働者にスポットを当てた報告書「移民労働者及び移民家事労働者のILOによる世界推計」を発表した。2013年のデータによると、祖国を去った移民の数は全世界で2億3200万人。うち15歳以上の生産年齢人口は約2億660万人で、実際に働いている人の数は1億5030万人に上る。

1億5030万人の移民労働者の55%(8370万人)が男性で、女性は45%(6660万人)。移民労働者の74.7%、数にして1億1230万人が高所得国で仕事している。中高所得国が11.7%(1750万人)、中低所得国が11.3%(1690万人)。低所得国にも移民労働者の2.4%(350万人)がいるという。

地域別にみると、全体の24.7%を占めたのが、世界一の経済大国・米国を擁する北米だ。以下、北・南・西欧23.8%、産油国が多いアラブ諸国11.7%、東欧9.2%、東南アジア・大洋州7.8%、南アジア5.8%、サブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカ5.3%、中央・西アジア4.7%、東アジア3.6%、ラテンアメリカ・カリブ2.9%、北アフリカ0.5%の順。アラブ諸国は、男性の移民労働者に限れば全体の17.9%が集まっているのに対し、女性はたったの4%と極端に少ない。

男性の移民労働者がいる地域別シェア(ILOの報告書から引用)

男性の移民労働者がいる地域別シェア(ILOの報告書から引用)

女性の移民労働者がいる地域別シェア(ILOの報告書から引用)

女性の移民労働者がいる地域別シェア(ILOの報告書から引用)

アラブ諸国ではまた、地域全体の労働者の35.6%を移民労働者が占めているのも特徴。これは他の地域と比べても抜きんでた数字だ。北米の場合、20.2%。北・南・西欧は16.4%、中央・西アジアと東欧はそれぞれ10%、9.2%にとどまる。移民労働者が少ない東アジアは0.6%にすぎない。

移民労働者の業種は、第三次産業(サービス業)が断トツで多く、全体の71%(1億680万人)を占めた。第二次産業(製造業や建設業)が17%(2670万人)。第一次産業(農業、林業、漁業、鉱業)は11%(1670万人)だった。

サービス業のなかでも家事労働(お手伝い、メイド)に就くのは1150万人。うち850万人が女性だ。家事労働者は世界全体で6710万人と推計されるが、この17%を支えているのが移民。

女性の移民家事労働者の地域別シェアは、トップが東南アジア・太平洋の24%。北・南・西欧22%、アラブ諸国19%、東アジア11%、ラテンアメリカ・カリブ8%、北米6%と続く。ILOは「社会の高齢化などを考えると、ケアや家事サービスのニーズを満たすために、今後も多くの家事労働者が国境を越える可能性が高い」と予測する。