ミャンマーにやってきたチェコの“意識高い系AIESECer”、本音を語る

ヤンゴンの僧院学校で英語を教えるチェコ経済大学のミカエラさん。生徒からの人気も高い

たくさんの学生ボランティアが海外から集まるミャンマー。そのひとりに、日本にもよくいる圧倒的成長を求める“意識高い系”のチェコ出身の女子大生がいた。名前はミカエラさん(22)。8月10日から1カ月、ヤンゴン市内北部のミンガラドン地区の僧院学校で、将来僧侶になる子どもや貧しくて学校に通えない子どもに英語を教えている。「なんとなく選んでヤンゴンにやって来た。成長したい」と語る。

ミカエラさんはプラハ経済大学の4年生。この大学に支部をもつ学生団体AIESECのメンバー(AIESECer)だ。海外インターンやボランティアを派遣するAIESECは世界各地に支部を持ち、成長意欲が旺盛な意識の高い学生が多いことで知られる。

彼女がAIESECに加入したのは1年半前。大学2年のときだった。「新しいものを見てみたい。さまざまな活動を通して自分の能力を高めたかったの」。動機についてこう語る彼女は、まさに日本の意識高い系の学生と重なる。どんな能力を伸ばしたいのかと聞くと、プレゼンテーションスキルやロジカルシンキングといった日本でも耳慣れた単語が飛び込んできた。

一方でこうも語る。「実際はコミュニティがほしかったのかな。1年生のとき授業が少なくて友人が少なかったの」。渡航先にミャンマーを選んだ理由は「うーん。なんとなく。ミャンマーがいいというより、他の国でいいものがなかった」。費用や渡航経験の有無を考えて、消去法だったという。

ヤンゴンの僧院学校で英語を教えるというAIESECミャンマーが作ったプロジェクトを実行するのは、ミカエラさんたち4人の外国人女性だ。チームはベトナム人2人、ドイツ人、チェコ人のミカエラさんで構成される。1コマ45分の授業を1日平均3つ担当し、週5日1クラス60人の生徒に教えるのは、異国の地から来た彼女たちにとってなかなかの重労働だ。

だがミカエラさんは「とても有意義。ミャンマーの英語教育の問題点もわかったし、自分の忍耐力やプロジェクトマネジメントのスキルも向上した」。彼女が目的としていた自己成長は果たされたようだ。

ただこうも続けた。「2年後にまた渡航する時には、今回の反省を生かしたい」。ミカエラさんはミャンマーで教育支援をすることに、そもそもの目的意識をもっていなかった。彼女が時折発する「なんとなく」というフレーズが強く物語っている。

プロジェクト自体も、どんな結果を生むのか、自分たちが離れた後のプログラムや教室の行く末はどうなるのか、といったことに無関心だった。また、チェコのAIESECメンバーも、弱者救済などの貢献よりも、自己成長を重視する向きが強いという。

ミカエラさんは次回、他者への貢献という強い目的意識をもってプロジェクトに臨みたいと考えている。「せっかくプロジェクトをするなら、何か人のために形を残さないと」