200人に1人しか靴を履かないミャンマー人!? ロンジーにはサンダルがお決まりなのか

0321佐藤くん、写真テインジーマーケットで母親から買ってもらった「おしゃれな靴」を履くミャンマーの3歳児(ヤンゴン)

ミャンマー・ヤンゴンの中心部にあるテインジーマーケットで靴を履くミャンマー人を数えたところ、200人中たったの1人しかいなかった。199人がサンダルだ。ミャンマー人が靴を履かない理由を考えると、「靴の値段が高いこと」「常夏の気候ではサンダルの方が快適なこと」に加えて、民族衣装のロンジー(腰に巻く布)と靴はマッチしないというファッションの問題が足かせになっていることがわかった。

■「ロンジーと靴は合わないでしょ!」

ミャンマー人が靴を履かない第一の理由は靴の値段が高いからだ。テインジーマーケットの靴屋は、サンダル1足を1500~2500チャット(150~200円)で、靴1足を4000~8000チャット(400~800円)で売る。靴の値段はサンダルのおよそ3倍だ。

第二の理由は、常夏のヤンゴンではサンダルの方が快適だからだ。ヤンゴンの3月の平均最高気温は36度。「靴は暑いだろう。わざわざ履かないよ」。テインジーマーケットで買い物していた地元の若者たちはこぞってこう答える。

第三の理由は「おしゃれ」に対するこだわりだ。「ロンジーと靴は合わないでしょ!」とヤンゴンの若者たちは口をそろえる。テインジーマーケットで実際、ロンジーをはくミャンマー人100人を観察したところ、靴を履いていたのはゼロだった。ロンジーは民政移管されたいまも、老若男女から愛される“ボトムス”だ。

■「収入がアップすれば靴は売れる」

テインジーマーケットには、路上での販売も含め、少なくとも8軒の靴屋がある。ヤンゴンにもサンダルではなく、靴をあえて履く人もいる。3歳児の母親は「息子が段差で滑って足をくじかないように買いに来たのよ。サンダルを履かせるよりも、靴の方が安全だから」と親心をのぞかせる。ミャンマーの道路はでこぼこしているうえに、穴が開いている箇所も少なくない。万が一、穴に落ちると足をけがし、破傷風に感染するリスクもある。

靴を売っているのはマーケットだけではない。2015年12月にオープンしたヤンゴンを代表する高級ショッピングモール「ミャンマープラザ」では、アディダスやナイキ、スケッチャーズ(米ロサンゼルス発のシューズブランド)など有名なブランドショップが並ぶ。アディダスのショップで売られるスポーツシューズは10万~20万チャット(1万~2万円)と、ミャンマーの平均月収8万チャット(約8000円)を上回る値段だ。店員は「多いときで1日20~30足売れる。半年前よりもよく売れる感じがする」と話す。スケッチャーズの店員は「お金持ちが買いに来る」と、庶民からの需要はないと指摘する。

2011年の民政移管と経済改革をきっかけに、富裕層・中間層が増えつつあるミャンマー。今後も7%の国内総生産(GDP)成長率を続けられれば、靴を履く人は増えるのだろうか。テインジーマーケットで靴屋を営む50歳の男性は「靴が売れるかどうかは経済次第。経済が伸びればミャンマー人の収入もアップする。靴は売れるだろう」と推測する。西洋化の波にのまれ、ロンジーをはく人が減ったとき、靴は、この国でも重要なファッションアイテムになっているかもしれない。