「2人の幼い子どもを学校に行かせたい」、ベナンのパイナップル農家マティアス・オジュさんは炎天下で毎日10時間働く!

パイナップル農家のオジュさん(ベナン・コトヌー郊外のパイナップル畑で撮影)パイナップル農家のオジュさん(ベナン・コトヌー郊外のパイナップル畑で撮影)

西アフリカのベナンでパイナップルは主要産業のひとつだ。パイナップル農家のマティアス・オジュさん(30)は、同国最大の都市コトヌー郊外のグロ・グレボジ村で、1ヘクタールのパイナップル畑もつ。メイズやキャッサバなど他の作物よりも高値で取り引きされるパイナップルは栽培するのに手間と時間がかかる。1日の労働時間は農家によって異なるものの、オジュさんの場合は炎天下のなか1日10時間。キツイ仕事を続ける裏には、「子どもたちを学校に行かせてあげたい」との願いがある。

パイナップルの種を植えてから収穫するまでの期間はベナンの場合1年2カ月かかる。収穫量は1ヘクタール2000個以上。パイナップル1個あたりの売値は、大きいもので約250CFA(約50円)、中くらいのものは約150CFA(約30円)、小ぶりのものは約100CFA(約20円)だ。オジュさんの売り上げは1シーズン(1年2カ月)で約40万セーファーフラン(CFA、約8万円)。ベナンの1カ月の最低賃金(2017年時点)約4万CFA(約8000円)を下回るのが実態だ。

ただオジュさんは、パイナップル以外にもメイズ(白とうもろこし)やキャッサバ、ピーナツ、トマトを栽培する。パイナップルの収穫を待つ1年2カ月、収入がない状態では生計が成り立たないからだ。パイナップル以外の作物の売り上げは1カ月約4万CFA(約8000円)と、1カ月に換算すればパイナップルを上回る。

「パイナップルの栽培はとても難しいんだ」と苦労を語るオジュさん。毎朝6時にはパイナップル畑に向かい、帰路につくのは夕方6時ごろ。休憩時間2時間だ。10時間の炎天下労働は身体にこたえる。

パイナップルの栽培は、種を植えるまでの工程が大変だ。まず雑草が生えている土地を、機械を使わずに更地にする必要がある。1ヘクタールの土地を整備するのに要する時間は約2週間。次に、パイナップルの苗を更地にした土地に植える。苗がない場合は、車1台をレンタルして苗を買いに行く。苗は車1台分で約1万5000CFA(約3000円)。車のレンタル代金も負担する必要がある。

オジュさんは「パイナップルの値段は今後300CFA(約60円)程度まで値上がりするだろう」と予測する。「ベナン産のパイナップルは他の国のパイナップルと比べても、質が高くておいしい」とオジュさんが豪語するベナン産のパイナップルは、消費者の心をつかみ、需要が高まってきているからだ。「将来的には、パイナップル畑を現在の1ヘクタールから、2ヘクタールに拡大させたい」

パイナップル農家として休みなく懸命に働くオジュさんには「子どもたちを学校に行かせたい」という切実な願いがある。彼は幼いころ、友だちが学校に通っているのにもかかわらず、家庭の事情で学校に行けなかった。「まだ2歳と3歳の子ども2人には学校を出て、農家よりも良い仕事に就いてほしい」。農家の苦悩を知るオジュさんはこう打ち明けた。