返済率99.96%・生活が良くなった女性4割! ミャンマーのマイクロファイナンス機関「ソシオライト」の功績

ヤンゴン・シュエピタ地区の融資ミーティングに参加する、ソシオライトの地域マネージャー(右)と借り手の女性3人

■成功のカギは「言葉遣い」

ミャンマー・ヤンゴンに、1万7000人の女性の貧困層をクライアントにもつマイクロファイナンス機関「ソシオライト」。2011年に設立、ミャンマー政府からは翌年ライセンスを取得したこのNGOは、貧困層に提供する小口融資の期限内返済率が99.96%と驚異の高さを誇る。サービスを提供して以来、4割のクライアント(女性の貧困層)が収入が増えたり、生活環境が改善したり、子どもを学校に通わせるようになったという。

ソシオライトの創設者で代表者のウ・ナイン・ウィン氏(74)は「これらの数字は、他のマイクロファイナンス機関と比べても群を抜いて高い。成功のカギは、借り手(貧困層)のマインドセット(考え方)をより良く変えることだ」と強調する。

同NGOのスタッフは85人。借り手のマインドを変えるため、クライアントの家庭をひんぱんに訪問し、生活状況をモニタリングする。「そこで大切なのは、クライアントに対する言葉遣い。スタッフは毎日1時間、言葉遣いを練習している」(ウ・ナイン・ウィン氏)

■初回の融資額は7500円

小口融資を受けたい女性はまず、血縁者以外の5人のメンバーでグループを作る。メンバーはID(身分証明書)と証明写真、家の登記簿の控え、署名を添えてグループ単位で融資を申し込む。これを「グループ・レンディング」と呼ぶ。

グループ・レンディングへの参加料は1人100チャット(約10円)。最初に払うのはこのほか、預金通帳代200チャット(約20円)、死亡時手当として500チャット(約50円)だ。死亡時手当とは、借り手が死亡した際、遺族に8万チャット(約8000円)が支払われ、また残高は回収しないというもの。

最初の融資額は1人当たり上限7万5000チャット(約7500円)。返還期限は6カ月(これを1サイクルと呼ぶ)。期限内に完済し、事業拡大が可能になれば融資額を増やしていける。

■借りたお金は賭け事に使わない!

ヤンゴン中心部から北へ約25キロメートルのところにあるシュエピタ地区は、ソシオライトがマイクロファイナンスを提供する地区のひとつ。今にも崩れそうな草ぶきの屋根と竹の壁の小さな家々が続く。そういった家のひとつ(クライアントの家)で、借り手女性の10人とソシオライトのスタッフの融資ミーティングが行われている。

スタッフは、借り手のグループメンバーに「借り手としての約束」を伝え、唱和させる。「借りたお金はグループリーダーを通して毎週定額を返す」「2年内に、ソシオライトから借りる前の借金をすべてクリアにする」「借りたお金は事業投資のみに使い、借金の穴埋めや賭け事には決して使わない」などだ。

■ビンロウ売りからホステル経営へ

2月18日の融資ミーティングに参加したのは10人の借り手。うち新規の借り手は2人だった。継続して融資を受けている3人に商売の内容とソシオライトのスキームに参加後、生活がどう変化したのかを尋ねた。

≪ティン・ティン・チョウさん(43)≫

融資を受けるのは6サイクル(3年)目。果物や野菜、干物を売る。夫は、電気製品の修理工。参加前は借家住まいだったが、自宅を建てた。事業は順調。現在の融資額は30万チャット(約3万円)。

≪ニン・ヌエ・スーさん(32)≫

融資を受けるのは4サイクル(2年)目。参加前はモヒンガー(ミャンマーの国民的ヌードル)を売っていた。現在は30人の固定客に1食1000チャット(約100円)で食事を売る。現在の融資額は20万チャット(約2万円)。借金をクリアにでき、今は事業投資のために貯蓄している。

≪ヒュー・ヒュー・ウインさん(37)≫

5サイクル(2年半)目。参加前はビンロウを売っていた。現在は小さなホステル(6室)を建て、テナントも入った。現在の融資額は30万チャット(約3万円)。