死ぬのもカネがかかる! ヤンゴンの貧困エリア「ダラ地区」に住む人たちの火葬事情

0418嶋田 火葬場 写真火葬場。火葬の際、日本のように親族が待ったり、骨上げ(拾骨)したりすることはない(ヤンゴン・ダラ地区)

人は「ただ」では死ねない。全人口の9割が仏教徒のミャンマーの都市部では火葬が一般的だが、棺桶代、遺体を棺桶に入れて火葬場に運ぶ費用、火葬代がかかる。こうした費用は友人・隣人からの寄付で賄うのが通例だ。ところがヤンゴンの貧困エリア・ダラ地区の人たちは、NGOや政府からの助けを受けて生涯を終える。貧困は食料や医療の問題だけではない。

ダラ地区は、ヤンゴンのダウンタウンからヤンゴン川を船(国際協力機構=JICAが支援したもの)で渡った対岸に位置する。ダラ側の船着き場から1時間ほど歩くと、火葬場が目に飛び込んでくる。巨大な2本の煙突が目を引く。

ミャンマーの火葬はシンプルだ。遺族は棺桶を用意し、遺体を入れた棺桶を火葬場まで運び、それを燃やす。火葬場で特別な儀式はしない。

棺桶の値段はそれぞれだ。ダラ地区での目安は1万~5万チャット(1000~5000円)。亡くなった人の家族が友人や近所の人からお金を寄付してもらって、棺桶を買う。棺桶の費用を家族が負担する必要はほぼない。

しかし寄付が集まらないケースもある。ダラ地区に住むゾウゾウさん(31)は2010年に父親を病気で失った。ゾウゾウさんは棺桶代をねん出できず、NGOに棺桶を寄付してもらった。「棺桶代を出せない私のような貧しい人はたくさんいる。棺桶をくれるNGOの活動はとても素晴らしい」と話す。

遺体の入った棺桶はかつて、家族や友人が家から火葬場まで担いで運んでいた。友人の車で運ぶケースも多かったという。遺族はその際、友人たちに少額の謝礼を渡していたようだ。

ただ遺体の入った棺桶は重く、また火葬場まで1時間かかることもあり、担いで持っていくにはかなりの労力がいる。現在は地元のNGO「ヘルピング・デッド・ボディ」が無料で遺体を運んでくれるという。

ダラにある火葬場の責任者ミェイアウさん(56)は「今はヘルピング・デッド・ボディがほとんどの遺体を運んでくる。自力で持ってくることのできない貧しい人は多い。ヘルピング・デッド・ボディの活動はとてもいいことだ」と語る。この火葬場は2003年に、僧侶の寄付によって建てられ、現在は政府からの支援を受けて運営している