都会の高架下で勉強する不就学の子どもたち、ヤンゴンの夜景に灯る希望の光

学習会場は高架下で両側に車道の走る中央分離帯。ここにゴザ、折り畳み机、電気スタンドが並べられる学習会場は高架下で両側に車道の走る中央分離帯。ここにゴザ、折り畳み机、電気スタンドが並べられる

言葉を失う光景が広がっていた。夜7時のミャンマー・ヤンゴン市にある最新のショッピングモール「レイダンセンター」の交差点。その目の前の高架下、両側に3車線ずつ車が行き交う広めの中央分離帯にゴザが敷かれ、学校に通っていない10人ほどの子どもたちが電気スタンドの明かりを頼りに勉強していた。教えているのは大学生を中心としたボランティアだ。

学んでいるのは、貧困のため学校に通えないだけでなく、路上で花などを売って得る現金収入で家計を助けなければ家族の生活が立ち行かなくなる状況に追いやられている子どもばかりだ。この子どもらは、一時間勉強をすれば、一時間分の売り上げが減ってしまう。そこで、勉強しても売り上げを失わずに済むよう、ボランティアの大学生代わりに花を売る。車用の花飾りの束を抱えて信号待ちの車の間を売り歩いて販売し、その売り上げは子どもに配分される。

ボランティア団体名は「ミンガラー・ニャ・チャウン」。ニャ・チャウンは夜間学校を指す。土日を含む毎日、夜7時から9時までこの高架下に集まる。2015年から活動を継続してきた。この場所は付近の交通量が多く、クラクションの騒音と排気ガスの臭いが常にあたりを包む。子どもたちの質問に対し、学生ボランティアは大きな声とジェスチャーで答えなければならない。それでも、子どもも学生も勉強に集中して表情は明るい。

活動にはヤンゴン工科大学などの大学生ら約20人が参加する。主に学習指導、花飾り作り、販売といった役割分担がある。ウェブサイト等は持たず、学生の口コミや路上で見かけた人からの申し出で徐々に協力者を増やしてきた。必要な学用品や備品はメンバーのポケットマネーで賄い、支援者の寄付があれば子どもたちに夕食を提供するときもあるという。

団体の創設者で代表を務めるのは、男性会社員テ・リン・アウンさん(22)だ。「子どもたちには将来、普通の人たちと同じように働き、安定した生活を送ってほしい。夢はいつかこの中から、国のリーダーになる人材が出てくれ」と語る。

急速な経済発展の陰で深まる貧富の格差が、子どもたちの成長過程に深刻な差をもたらしている。学習塾に通わせるゆとりがあり教育熱心な家庭も多い中で、家計を支える仕事に追われ学習の機会を失う子どももいる。一方で、ミャンマーの人々にはお互いを助け合う精神が浸透し、困難に直面すると政府の支援を待つより自力で行動する文化が根付く。海外ブランドも入居する華やかなレイダンセンターから30メートルほどしか離れていないその場所で、影をなす一角にポツリポツリと浮かぶ光は、小さいながらも将来への希望を象徴するようであった。