フィリピン・ミンダナオ島マラウイのイスラム過激派「マウテグループ」と国軍の戦闘から逃れたノロリサ・アムボロトさん(30)を9月26日、ネグロス島ドゥマゲティのモスク「イマム・ホメイニ・イスラミック・センター」で取材した。この女性はマラウイのイスラム学校(IBN SIENA INTEGRATED FOUNDATION)に勤めていた教師。ドゥマゲティにあるモスクのイマム(イスラム教指導者)を夫にもつ。「マラウイの戦闘区域に取り残された友人が国軍の無差別な爆撃で殺されている。ムスリム(イスラム教徒)のうちテロリストはほんの一握りなのに」と強く訴える。
――5月23日にドゥテルテ大統領がミンダナオ島に戒厳令を出し、国軍が空爆を開始した。マラウイの戦闘状況はどこまで悪化しているのか。
「マラウイで、国軍はムスリムの家やモスクを破壊し、罪のない市民を無差別に殺している。テロリストはムスリム全体のほんの一握り。大統領のやり方は残酷すぎる。マラウイの戦闘区域に住んでいたムスリムたちは親せきを頼り、ミンダナオ島北部のカガヤンデオロ市、イリガン市に逃れた。知り合いがいない人は、イリガン市のマウィラクリスティナ、サグイランの避難所に滞在していると聞く。
私の両親や親せきは、同じマラウイ市内でも戦闘区域から約4.5キロ離れた場所に住んでいたため、マラウイ市内に留まっている。現在は、近くのミンダナオ州立大学に避難している」
――マラウイの勤務先のイスラム学校はどんな状況か。
「私の勤務先だったイスラム学校は4月から夏休みに入ったため、夫が仕事をしているドゥマゲティに来ていた。しかし5月下旬からマラウイで戦闘が始まり、帰れなくなってしまった。児童たちの連絡情報も学校に置いてきてしまった。彼らの状況を確認することもできない。現在はモスクの周りにあるムスリムコミュニティに住んでいる。
イスラム学校は治安悪化のため休校になった。9月5日から授業を再開しようとしたが、校門の前で殺害事件があり、延期になった。その後9月18日から再び授業を始めたが、以前に比べて児童は非常に少ないと聞く。私は学校が再開してもマラウイに戻ることができなかったので、仕事をクビになってしまった。イスラム学校から許可が出れば再び教師として働くことができる。ただし現在ドゥマゲティの公立小学校に通う4人の子どももいるので簡単にマラウイ帰ることはできない」
――マラウイに住むキリスト教徒も爆撃を受けたのか。
戦闘が始まったとき、マラウイに住むムスリムはまず、マラウイ市の人口の4分の1を占めるキリスト教徒を助けようとした。これは自分たちがキリスト教徒を殺そうとするマウテグループとは違うということを証明するためだ。私はこの事実を友人のフェイスブックの投稿や、ムスリムに助けられたと話すキリスト教徒をニュースで見て知った」
――ドゥマゲティの暮らしはどうか。
「基本的には平和な日々を送っている。私はかつて外出するときはニカブ(目だけを見せるムスリムの女性の服装)をかぶっていた。しかしこれはマウテグループやIS(イスラム国)などの過激派と同じスタイル。そのためニカブをかぶってドゥマゲティのマーケットに行ったとき、『テロリスト』と言われたこともある。私はドゥマゲティには毎年来ていたが、マラウイでの戦闘が始まる以前はなかったことだ。逮捕されるのではないかと怖くて、それ以来はニカブをかぶって外出するのをやめた」