日本企業とアフリカ留学生が相思相愛! 人気の「ネットワーキングフェア」に潜入

①	ネットワーキングフェアの冒頭で行われた講演会。アジア経済研究所の研究員は「アフリカの工業化には人材育成が欠かせない」と強調したネットワーキングフェアの冒頭で行われた講演会。アジア経済研究所の研究員は「アフリカの工業化には人材育成が欠かせない」と強調した

「最後のフロンティア」とも称されるアフリカ。アフリカでのビジネスチャンスをつかもうと、いま日本の企業が力を入れているのは、ビジネスの「水先案内人」となるアフリカ留学生の獲得だ。留学生も日本の企業で働くことへの熱意も高い。両者が互いのパートナーを探すため、2017年から日本企業とアフリカ留学生によるネットワーキングフェアという集まりが盛んに開かれている。ganasは「第4回アフリカビジネス研究会 アフリカ留学生とのネットワーキングフェア」に潜入取材。大盛況に終わった様子を取材した。

主催は国際協力機構(JICA)のほか、日本企業の海外進出に携わる日本貿易振興機構(JETRO)や神戸市などだ。アフリカに眠るビジネスチャンスを日本企業に知ってもらい、必要な人材となるアフリカ留学生と引き合わせることを目的としている。会場となった神戸ポートピアホテルのバンケットのドアを開けると、30を超える日本企業の担当者とおよそ100人のアフリカ人留学生で満席。会場はすでに独特の熱気に包まれていた。

■“アベ・イニシアティブ”!?

ここまで多くのアフリカ留学生を集めたカギは、日本政府の「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(African Business Education Initiative for Youth)」、通称「ABEイニシアティブ」だ。5年間で1000人のアフリカの若者に日本の大学院などでの教育や、日本企業でのインターンシップの機会を提供している日本政府の事業で、今回の留学生たちもこの事業で来日している。

その名の通り、安倍首相が2013年の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で自ら発表した政府肝いりのプロジェクトで、アフリカ進出が先行する中国に対する巻き返しを図りたいとの狙いもある。ネットワーキングフェアの冒頭で行われた講演会には、JETROアジア経済研究所の研究員や大手コンサルティング会社のコンサルタントらが登壇。日本企業の進出がアフリカのこれからの発展につながることを強調すると、会場は拍手に包まれた。

■会場は最高潮に!

参加者お待ちかねのネットワーキングフェアが始まると、それぞれの企業のブースの前には、留学生が列をなして次々と並び、人事担当者らが英語を駆使して会社の取り組みについてのプレゼンテーションを始めた。参加企業は留学生から現地の生の情報を聞き取るだけでなく、意欲的な人材がいればインターンとしてのヘッドハンティングも交渉可能とあって、どの企業も前のめりだ。留学生に熱心に声をかけていたナイジェリアで農業ビジネスを手がけている兵庫県の企業の担当者の男性は「高学歴で専門的な人材とつながることができる良い機会」と人材獲得に意気込みを見せていた。

企業から話を聞く留学生の表情も真剣だ。記者が留学生に取材したところ、「日本企業は魅力的か」という質問には、話を聞いた7人全員が「イエス」と答えた。同志社大学のビジネス研究科に所属する南アフリカ出身のタマラ・サシャ・スーさんも日本企業でのインターンを望む留学生のひとり。「ABEイニシアティブのおかげで、日本で勉強できる機会を得られたのはとても良いこと。自分のスキルを高め、成長したい」と意義込みを話した。

■日本企業のアフリカ進出 課題は?

一方、日本企業のアフリカ進出は一筋縄ではいかないようだ。エチオピアの現地工場で革製品を作る会社ヒロキ(横浜市市中区)の代表取締役の権田浩幸氏は、会場での講演で、日本人とエチオピア人の品質感覚の違いについて触れていた。

「日本人は見えない部分も重んじ、服の裏の縫製など目につかない部分も含めて品質を見る。しかし、現地では質を重んじる傾向はあまりない。日本の消費者に受け入れられる製品を作るためには、裁断・縫製の技術を教えるだけでなく、日本ならではの感覚を根気よく教える必要がある」。権田氏は、商品の質を高めビジネスを成功させるためには現地での人材育成が不可欠だと指摘する。

これからの日本とアフリカの懸け橋となり両者を近づけていくのは、外交官のような国の代表だけではなく、お互いの「人」。アフリカが将来的に日本からの援助がなくとも自らの力で発展するためには、アフリカの人たちへのきめ細かな育成がカギになるといえそうだ。

南アフリカ出身で同志社大学に留学中のタマラ・サシャ・スーさん。日本の建築技術を学び、母国の発展に貢献することが夢だという

南アフリカ出身で同志社大学に留学中のタマラ・サシャ・スーさん。日本の建築技術を学び、母国の発展に貢献することが夢だという