アボカドの生産がコロンビアの農家を貧困から救っている。農地拡大による雇用機会と収入の増加を目指した国家プロジェクト「コロンビアの種まき」(Colombia Siembra)が功を奏して、2017年までに41万2000人の農民が貧困から抜け出した。コロンビア第2の都市メデジンのEAFIT大学で国際ビジネスを教えるフアン・カルロス・ディアス教授は「コロンビア政府は2000年代の後半からアボカドの生産地域の拡大してきた。これにより多くの農民が極度の貧困から脱却した」と指摘する。2017年8月からはコロンビア産のアボカドが米国市場に出回り始めたことで、さらなる貧困削減効果が見込めそうだ 。
コロンビアの種まきを発表したのはサントス大統領。2015年のことだ。アボカドをはじめとする農作物の栽培面積を拡大し、農民の雇用と収入の増加を掲げる。コカインの原料であるコカの葉を栽培する農家に対し、合法な作物(アボカドなど)へ転換させること、また極貧に苦しむ農家を減らすことが狙いだ。
「他のラテンアメリカ諸国と比べても、コロンビアの熱帯気候と肥沃な土地はアボカドの生産にうってつけだ。おかげでアボカドが1年中採れる」とディアス教授は言う。コロンビア商工観光省によると、2012年から2017年の間でアボカドの播種面積は2.3倍増加。さらに2015年に1050万ドル(約11億円)だったアボカド出荷額は2016年には3500万ドル(約37億円)まで成長した。
長年の努力は米国市場参入というかたちで実る。2017年8月には、アボカドの消費量世界1位(1人あたり年間3キロ)の米国がコロンビア産アボカドの輸入を始めた。これによりコロンビアは、20億ドル(約2000億円)規模の需要をもつ米国のアボカド市場に参入したことになる。
ディアス教授は「米国政府が輸入アボカドに設ける品質基準は高い。米国市場に認められることは、品質が保証されるということだ。コロンビア政府は米国をはじめとし、欧州やアジアの市場への進出を狙っている」と将来を見据える。世界のアボカド消費量は年に3%のペースで伸びているが、生産が追いついていないのが現状だ。
「2012年から始まったコロンビア政府と過激左翼ゲリラ『コロンビア革命軍(FARC)』の和平交渉も貧困削減に一役買った」とディアス教授。和平交渉を経て2016年にFARCはゲリラ組織から政党へと移行した。コロンビア社会を分断したゲリラとの交戦が収まった今、同国政府は「生まれ変わったコロンビア」をスローガンに、貧困層も含むインクルーシブ(包摂的な)社会づくりを目指している。