ベナンのヨーグルト工場は「超ブラック」だった! 1日15時間労働が慢性化

ヨーグルト工場で技術者として働くシンプリス・ベヌーガンさん(ベナン・コトヌーで撮影)

西アフリカ・ベナンのヨーグルト工場で、1日15時間ときには26時間と信じられないぐらいの長時間労働が慢性化している。その理由は、壊れやすい中国製の機械の使用と深刻な人手不足にある。ベナン最大手のヨーグルト会社の工場で働いていたジコ・ババオデさん(28)は「度重なる長時間労働で体調を崩す人が多発している」と劣悪な労働環境を嘆く。

ベナン最大手のヨーグルト会社の工場に勤務する技術者のシンプリス・ベヌーガンさん(23)の労働時間は1日15時間以上だ。「朝5時半ごろには工場に入って、仕事が終わるのは夜の10半ごろ。休憩時間は1時間半だけ」と打ち明ける。睡眠時間を確保するため、出勤日の火~土曜日は工場の寮で暮らす。

ババオデさんは、ベナンで2つのヨーグルト工場で勤務した経験をもつ。「最初に勤めた工場では工場長だったこともあって、まともに休憩をとれなかった。1日の労働時間は26時間。2社目も1日約16時間働かされた」と言う。

ベナンのヨーグルト工場で長時間労働が慢性化している第一の要因は、壊れやすい中国製の機械を使っていることにある。機械の修理を担当するベヌーガンさんは「中国製の機械は、故障した部品を交換しても、6カ月後にまた壊れることも。ひどいときは修理をした5分後に動かなくなる」と語る。欧州製の機械は2年以上もつが、値段は高い。ベヌーガンさんの工場では欧州製と中国製の機械は半々の比率で導入されている。

中国製の機械の修理が難しいのは、スペア部品を見つけるのが大変という側面もある。このためスペア部品がない場合、技術者が部品をつくることもざらだ。そのぶん修理には時間がかかってしまう。

機械を修理する間、ヨーグルトの生産は当然ストップする。修理に要する時間は長くて丸1日。頻繁に修理すれば、それだけヨーグルトの生産に遅れが生じ、長時間労働につながるわけだ。

ヨーグルト工場がブラック化する第二の要因は、給料がほとんど払われないため、従業員が次々に辞め、その結果、人手が足りなくなるからだ。「2~3カ月連続で働いて、やっと1カ月分の給料がもらえた」(ババオデさん)。ババオデさんが工場長だったとき、人手がいないゆえに、自身も生産ラインに入って機械を動かしていたという。工場長としての仕事は、生産ラインを止めた後にこなすことになる。

ベナンのヨーグルト工場では、体の不調を訴える従業員は少なくない。エアコンがまともに動かず、工場内の気温は36度に上がる。そんな過酷な環境での長時間労働は体にこたえる。ババオデさんは「ほとんどの従業員は病院に行っていた。私も毎月のように病院に通っていた。ベナンにあるヨーグルト工場の9割が、従業員に過酷な労働を強いている。深刻な問題だ」と暴露する。

ベヌーガンさんによると、人手不足に陥る理由は、ベナンの技術専門学校では現場ですぐに使える技術者を育成できていないからだという。「学校を卒業しても、機械を修理できる若者は少ない。工場で働き始めても、どうやって機械を修理すればいいかわからないケースが多い」。技術専門学校では50年以上も前の機械の修理の仕方を学ぶという。「だけど、そんな古い機械を導入している工場はほとんどない」(ベヌーガンさん)のが現状だ。

ベヌーガンさん自身は、技術専門学校を卒業後、飲料会社で技術者として働きながら大学に通った。さらに、在学中に合計4社のインターンシップを経験したことで、実践的な機械の修理の技術を学んだという。

「学校は理論しか教えない。機械の修理に直結する実用的な技術を教えるべき。若者は、現場で働きながら学んでいくしか方法がない」とベヌーガンさん。ベナンのヨーグルト業界がヘルシーになるには、性能の良い機械への投資、人材育成、給料をきちんと支払うことが欠かせないといえそうだ。ただそのためにはヨーグルト会社が利益を出すことが必要。労働環境の整備が先か、利益が先か――。ベナンのヨーグルト業界は大きな課題に直面している。