西アフリカ・ベナンのコトヌーに、1日4着の服を仕立てる女性がいる。ドボノ・フロンセアさん(29歳)だ。月収は30万セファフラン(約5万4000円)。ベナン人の平均月収のおよそ2倍にのぼる。繁盛する理由についてフロンセアさんは「ベナンの伝統的な服ではなく、西洋風の短い丈のドレスを作っているのよ」と説明する。
フロンセアさんが営む店の名前は「ミス・クレア・ファッション」だ。ファッションがもともと大好きだったフロンセアさんは、コトヌーにあるファッションの専門学校ベル・アンファンを23歳で卒業した後、仕立屋になった。2015年、25歳のときに自分の仕立屋をコトヌーに開店させた。
ベル・アンファンは、婦人服の仕立ての技術教育ではベナン国内で有名な学校。フロンセアさんは、20人の同級生のなかで一番の成績で卒業した。その卒業証書を店内に掲げる。
フロンセアさんが作る服のほとんどが膝丈の西洋風のドレスだ。布はオランダ、ナイジェリア、ガーナ、マリ、コートジボワール、トーゴから仕入れる。「カラフルなアフリカンプリントでドレスを作るのはもう古い。最新の流行は、無地の光沢のある布で作ったドレスよ」とフロンセアさん。取材当日もフロンセアさんは、鮮やかなオレンジ色のショート丈のドレスを着ていた。
ミス・クレア・ファッションで仕立て服を頼むと、安いもので1着5000セファフラン(約900円)、ウェディングドレスなど高額なものは50万セファフラン(約9万円)する。値段には100倍の開きがある。
フロンセアさんによると、ベナンファッションの流行は10年前まで、アフリカの伝統的な柄で作った上下セット(ボンバ)とロングドレスだった。だが最近は、ワンピースでもショート丈が人気だ。
注文の仕方は2通りある。ひとつは、生地の専門店で好きな生地を探し、その生地を持ってミス・クレア・ファッションを訪問。カタログの中から好きなモデルを選んで注文する。もうひとつは、客が何も持たずに店を訪れ、生地とデザインをフロンセアさんに相談する方法だ。大半の客は自分で布を持ってくる。
「毎日、忙しいのよ」とフロンセアさんは楽しそうに語る。店内には、たくさんの生地やレースが所狭しとディスプレイしてある。ミシンは5台。全部が足踏みミシンだ。
コトヌーの界隈には仕立て屋がひしめく。店の生存競争は厳しい。だがミス・クレア・ファッションは宣伝をほとんどしていないという。客のほとんどが、「腕が良い」という評判を人づてに聞いて店にやってきる。
フロンセアさんには、実は7人の弟子がいる。店内で、仕立ての技術を教える。弟子は、授業料として年間5万セファフラン(約9000円)を払う。一人前になるには3年の修行は必要だ。「腕の良い弟子には仕事を振り分ける。将来はミス・クレア・ファッションの看板を使って仕事してもらってもいい」とフロンセアさんは言う。