エジプトが1万6000平方キロメートルの大規模農地開拓計画を発表、水供給めぐり政府見解にズレも

2014年6月に発足したエジプト・シシ政権が、大規模農地開拓に乗り出している。メディアサイト・アルモニターなど複数メディアが報じたもので、4年の政権任期中に約1万6000平方キロメートル(400万エーカー)の農地拡大を目指す。これは日本の岩手県に匹敵する面積で、エジプトの国土面積の1%以上にあたる。しかし、農地拡大の一方で、水資源確保をめぐり政府内でも対立や困惑があるようだ。

この開拓計画は、農業および土地開拓担当大臣のアデル・エル・ベルタギ氏が9月に正式発表したもので、まずは1年以内に計画の4分の1の開墾を目指す。国内11地 区を対象とし、西部砂漠地帯、南部のトシュカなどを中心に計画が開始される。農地開拓の目的は、食糧安全保障の達成、国内・国際競争力の強化など。エジプ ト独立系英字新聞デイリーニュースエジプトの最新報道によると、政府は、近日中に土地入札を行いたいとし、その際の農地価格は、市民グループや海外及び現地の投資会社からの条件を基に決定されるということだ。

しかし、農地拡大には、単に土地の確保だけではなく農業用水の供給確保も伴う。この水資源をめぐり政府内で意見が割れている。慎重派の意見として、水資源お よび灌漑担当省灌漑局局長のゲウェイリ氏は、次のように述べている。「利用可能な地下水を確認するため、衛星画像による徹底した調査研究をし,それに基づいて井戸を掘削する場所を選択している。しかし、地下水が出続けることを確証する研究はないので、農作物を継続的に生産できる保証はない」

さらに、前水資源および灌漑担当大臣のモハメド・ナスレッディン氏は明確に反対。「計画に足る地下水の蓄積はエジプトにはない。それどころか、地下水に頼って計画を進行することは地下水の供給を損ね、地下帯水層の水質を害する可能性がある」

一方、現大臣ホサム・マガジ氏は以下のように述べ、計画推進を目指す。「地下水の不足と将来の枯渇に関する問題は承知しているが、開拓予定地を分割することによってその問題はすでに解決済み。100万エーカーの農地も1カ所で開拓するわけではない。複数の土地で開墾すれば、農業活動を100年維持できるような水資源は十分にあり、さらに、水資源を有効活用するために最新の灌漑技術も導入する」

砂漠の国エジプトの主な水供給源はナイル川。国連食糧農業機関(FAO)によると、ナイル川からの取水量は年間555億立方メートル。スーダンとの水利協定(1959年)により取水量は規定されており、ナイル川の水資源はすでに極限まで開発されている。加えて、エジプトは年間約1.5%の人口増加に直面しているため、今後の水不足への対策が課題となっている。