1日120キロの古着を選別するインド人女性、ウェストピッカーに安く服を着てもらいたい!

SWaCHに届いたばかりの古着を選別するアウティさん。彼女の仕事場は古着のにおいが立ち込める(インドのプネーで撮影)

インド西部の街プネーに拠点を置くリサイクル・リユース企業SWaCH(スウォッチ)が展開する事業のひとつは古着のリユースだ。同社のオフィスがある建物の一室で、古着を黙々と選別する女性がいた。彼女の名前はスワナ・アウティさん(35歳)。まだ着られる服をウェストピッカーらに安く売るため、古着を選別している。自分の仕事についてアウティさんは「自分が選別した服が、ウェストピッカーの衣食住の『衣』になれると思うとやりがいを感じる」と胸を張る。

SWaCHが古着を集めるのには訳がある。第一のメリットはウェストピッカーらの洋服代の節約につながることだ。SWaCHに運ばれてくる服は1度に約120キログラム。アウティさんは手作業で1枚1枚きれいな服と汚れている服に分け、きれいな服を1カ所にまとめる。きれいな服は、ウェストピッカーらに20〜40ルピー(30〜65円)で売る。ウェストピッカーにとっては服を安く買えるとあって好評だ。ラインアップも子ども用から大人用、シャツやズボン、ストール、サリーなどさまざま。アウティさんは「ウェストピッカーらの力になれて嬉しい」と仕分けする手を休めることなく話す。

第二のメリットは、集めた古着を売って得た利益がSWaCHの活動資金になること。汚れがひどい服も捨てない。外部に委託してドアマットを作り、約40ルピー(約65円)で販売する。利益はSWaCHの活動資金に充てる。またウェストピッカーらが購入する服の売り上げもSWaCHの資金になる。

仕事にやりがいを感じるアウティさんだが、実は深い悩みがある。アウティさんには17歳と13歳の2人の子どもがいる。SWaCHで約1年前から仕事し始め、今は毎週月~土曜日の朝10時から夕方の6時まで働く。月給は1万2000ルピー(約1万9000円)だ。インドの水準からすれば悪くないが、子どもの教育費のほか、家族の生活費、同居する義父・義母の持病の治療費などをねん出する。毎月貯金できる額はわずか。「子どもにはちゃんとした教育を受けさせたい。立派な仕事にも就いてもらいたい。だけど今の収入では難しい」とアウティさんは心を痛める。

SWaCHに転職するまでアウティさんは、複数の仕事をしてきた。だが給料の遅配やカースト制度(SC=最下層)による職場内での嫌がらせといった問題があったという。「カースト制度はなくなりつつある、と多くのインド人は話す。けれど私はそう思わない」。アウティさんはこのときばかりは動かしていた手を止め、胸の内を打ち明けた。

アウティさんには実はウェストピッカーとして働いていた時期が1年ある。だが子どもを育てるには給料が低く、生活も苦しかった。しかし、SWaCHに来てからはカースト制度で蔑まれることもなく、自分の仕事に誇りをもって働いている。「自分の子どものため、そしてウェストピッカーのために頑張っている」と話し、アウティさんは再び古着の仕分け作業に戻った。