フィリピンバナナ「甘熟王」の労働者殺害から1年、FoE Japanが不買運動を呼びかけ

東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見をする、スミフルのバナナ梱包工場の労働組合のポール・ジョン・ディゾン委員長ら(2019年6月18日、FoE Japan撮影)東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見をする、スミフルのバナナ梱包工場の労働組合のポール・ジョン・ディゾン委員長ら(2019年6月18日、FoE Japan撮影)

スミフル(旧・住商フルーツ)がフィリピン南部のミンダナオ島で経営するバナナ梱包工場で、ストライキに参加した労働者ダニー・ボーイ・バウティスタさん(当時31)が殺されてから1年。国際NGO「FoE Japan」が「甘熟王」などスミフルブランドのバナナの不買運動を呼びかけている。フィリピン人労働者らは2018年10月、工場で使う化学薬品による健康被害や違法な請負雇用などの労働条件の改善を求めるストライキを決行。これに参加した約700人の労働者が不当解雇されていた。

■暴力・放火・殺人

FoE Japanが10月31日から呼びかける「スミフルバナナ・ボイコット!キャンペーン」は、ちょうど1年前にストライキに参加したダニーさんの殺害事件に端を発している。

FoE Japanによると、スミフルの工場は労働環境が過酷だ。換気の悪い工場で化学薬品にさらされ、皮膚病や頭痛、めまいを起こす。そういった中で1日15時間働いても日当は365ペソ(約790円)。共働きでも暮らすのがやっとの額だ。また、6カ月以上働く場合は正社員とする法律があるフィリピンで、短期の請負雇用を違法に繰り返してきた。

正社員にすることや労働環境の改善を求めた労働者らに対し、スミフルは交渉を拒否。「ナマスファ」労働組合は2018年10月、ストライキを敢行した。それ以来、組合員への暴力や自宅への放火が相次ぎ、組合員のひとりダニーさんは何者かに撃たれ即死したという。

解雇された労働者約700人のうち約300人は、2018年11月から遠く離れた首都マニラへ行き、抗議集会を大統領府や労働雇用省、日本大使館の前などで展開した。2019年6月18日には、ナマスファ労働組合のポール・ジョン・ディゾン委員長らが来日。日本の消費者に対してスミフルのバナナを買わないよう強く訴えた。

その成果からか、2019年 7月にフィリピン労働雇用省の国家労使関係委員会(NLRC)が、スミフルに労働者を復職させるよう行政指導した。だがスミフルはこれを無視したままだ。

■SNSへの投稿も!

ボイコットするバナナは「甘熟王」シリーズのほか、「朝のしあわせバナナ」「おやつの王様」「昭和の贅沢」などがある。 今回のキャンペーンの特徴は、不買運動(買わない)だけではなく、消費者が意思表示することを求める点だ。

意思表示の方法も具体的。スミフルバナナを販売するスーパーの投書箱へ、バナナの仕入先の変更するよう投書を書いたり、八百屋やコンビニエンスストアなどへ問合せたりするやり方を例文つきでウェブサイトで紹介している。SNSを使って意思表示をする場合は、「#BoycottSumifru」のハッシュタグをつけて投稿するようFoE Japanは促している

FoE Japanの狙いは、日本の消費者が声を上げることで、労働者の声を無視できなくなるよう圧力をかけることだ。ナマスファ労働組合は、2019年4月5日から全世界にスミフルバナナのボイコットを呼びかけてきた。バナナの約9割をフィリピン・ミンダナオ島に依存する日本もこの運動に応じた形だ。

スミフルブランドのバナナ

スミフルブランドのバナナ