【書評】ルワンダで誰もが知る人気番組を作った日本人がいた!「希望、きこえる?――ルワンダのラジオに子どもの歌が流れた日」

「希望、きこえる?――ルワンダのラジオに子どもの歌が流れた日」(汐文社、2020年6月、1500円+税)

アフリカのルワンダに、放送開始から数年で大人気になったラジオ番組がある。子ども向け教育番組の「イテテロ」だ。「希望、きこえる?――ルワンダのラジオに子どもの歌が流れた日」(汐文社、2020年6月、1500円+税)では、発起人で、国連児童基金(UNICEF)の職員でもある榮谷明子さんがイテテロを全国的に愛される番組に成長させた過程が描かれている。

イテテロは、ルワンダ初の子ども向け教育番組だ。週2回、全国放送される。コンテンツは物語や童謡、子守唄など。ルワンダ放送協会ラジオ局のスタッフや幼児教育の専門家、俳優らが制作に携わった。

イテテロを放送し始めてから数カ月たった時の話だ。榮谷さんは、イテテロがルワンダのお父さん、お母さんたちにどう受け止められているのか知るため、初の公開生放送をやってみることにした。訪れたのは首都キガリから車で西に1時間半ほどいったところにあるムハンガ郡。

町のサッカー場にイテテロの看板を立て、音楽を流し始めると次々に人が押し寄せた。5000人の家族連れで観客席はいっぱいだ。想像以上の反響を目の当たりにし、制作チーム全員が「イテテロは人々に必要とされている」と確信する。

榮谷さんのルワンダでの挑戦は、赴任してすぐに北部の村を訪れたことがきっかけで始まる。榮谷さんはそこで、幼稚園に通えず、おもちゃも絵本もない環境で、毎日なんとなく過ごす子どもがたくさんいることを知る。

「ルワンダの子どもたちが家でも楽しく学べる環境をつくりたい」。思い立った榮谷さんは、ルワンダの多くの家庭にあるラジオで放送できる教育番組をつくろうと動き始める。

本書の魅力は、榮谷さんが多くの人を巻き込んで番組作りをする過程が詳しく書かれていることだ。ルワンダ人の賛同を得られるか心配を抱えながらも地道に仲間を増やし、夢を実現させる榮谷さんの姿からは、子どもだけでなく大人の私たちも得られる学びがある。ステイホーム期間が続くこの夏、ぜひ親子で読んでいただきたい。