ラオスに保育園を建てたい! 商業高校生がビジネスで目指す新しい国際協力のカタチ

子供たちと生徒らの交流の様子子供たちと生徒らの交流の様子

高知商業高校の生徒会が、ラオスの村に保育園を建てようと10月からクラウドファンディングを始めた。高知商業高校は年に1社、模擬株式会社を設立して資金収集し、これまであわせて校舎8つを建設してきた。ところが、今年は新型コロナウイルスの影響で現地に行けず、活動の危機に瀕しており、クラウドファンディングで寄付を募ることに決めた。その活動には商業高校ならではの国際協力への考え方がある。

■ビジネスで国際協力を その背景にある「対等」という思い

高知商業高校の国際協力は1994年、高知ラオス会というラオスに教育施設を寄付する活動をしてきた団体と出会って始まった。これまでに約1600万円を集め、幼稚園2校、小学校5校、中高一貫校1校の8校舎を建設してきた。徹底しているのは持続可能性を重視したビジネスの考え方だ。

これまでの活動では一切寄付を募ったことがない。商業高校という特色を生かして、生徒会中心に毎年模擬株式会社を設立、12月に株主総会、会社を閉めるというプロセスを行う。教職員や保護者などから出資金を集め、それを元手にラオスの特産品の織物など商品を仕入れ、販売する。そして得られた利益を出資者に配当、残金を建設資金として高知ラオス会に寄付してきた。毎年同じ活動に募金してもらうことは難しいため「持続可能な形での資金収集」を考えたのに加えて、「ラオスと日本は対等平等だ」という認識も募金という形式を取らなかった大きな理由の一つだ。

ところが今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で現地入りすることを諦め、初となるクラウドファンディングを行うことにした。集めた資金は高知ラオス会を経由して現地に届け、建設費用とすることにしている。

■幼稚園を建てて若者の流出を止めたい

なぜ幼稚園の建設を目指すのか。2005年以降、年平均7.5%とASEANトップクラスの成長率を誇るラオス。ところが建設予定地のサンニャイ村は、国の成長に反して子供が減少している。生徒会が実際に聞き取り調査を行ったところ、村人の多くは共働きをするために、兄弟を一緒に通わせられる幼稚園と小学校が一貫した学校を求めて他の村に移動していることがわかった。それによって、将来の担い手である子供の流出が起こっているのだ。今後集めた資金は高知ラオス会へ贈呈、サンニャイ幼稚園を建設する費用に充てる。2021年5月に贈呈、2021年8月にラオス現地で幼稚園の落成式を行いたいと考えている。

ラオスは家族といる時間が長く、職場に子供がいることも多い国。この保育施設寄付でラオスの幼児教育の発展に寄与したいと生徒会長の3年生・徳広菜香さんは話す。

■ラオスでの研修 仕入れでは教職員らと学んだラオス語でやりとり

生徒たちの活動は、「支援」だけではない。希望者は教職員とともに現地で学び、ビジネスの基礎をも身につけている。現地で建設に必要な物品を確認するほか、教育施設を建設する際に必要な契約書のサインなども行う。また、毎年高知市内の商店街で行う行事、「はりまやストリートフェスティバル」で売る商品の買い付けを行っているほか、さらに商業高校で学んだ知識を生かして、お菓子など様々な商品の販路拡大支援などビジネスの援助も行っているという。現地では、時には生徒自身が現地の人とラオス語でやりとりを行い、自分たちで学んだラオス語で商談が成り立つことに喜びを感じているという。訪問した学校では、折り紙や紙飛行機を子供らと一緒に作ったりよさこい踊りを披露したりなど日本や高知の文化を伝える交流も行っている。研修に参加した生徒らは「毎年私たちと会うことを楽しみにしてくれている」と笑顔で教えてくれた。子供らからもラオス語を教えてもらい、「学び合える関係」と語る。

1つの教育施設の建設につき平均およそ200万円の資金が必要だということで、生徒会では12月16日までにクラウドファンディングサイトREADYFORを通じて150万円を集めることを目標に据えた。12月5日現在、目標とする150万円に達することとなった。