JBIC・フジタ・ホテルオークラ‥‥オールジャパンでミャンマー国軍に資金提供か、NGO5団体が国連に調査を要請

建設中のYコンプレックス(ミャンマー・ヤンゴン)。今回の軍事クーデターを受け、どうなるのか注目が集まる建設中のYコンプレックス(ミャンマー・ヤンゴン)。今回の軍事クーデターを受け、どうなるのか注目が集まる

NGO5団体は2月17日、ミャンマーのヤンゴンで開発中の複合商業施設「Yコンプレックス」の土地の賃料が国軍の銀行口座に振り込まれているとして、国連人権高等弁務官事事務所(OHCHR)に調査の要請書を提出した。Yコンプレックスには、国際協力銀行(JBIC)、三井住友銀行、みずほ銀行が融資し、大和ハウス工業の子会社であるフジタ、東京建物のシンガポール法人東京建物アジアが事業を進める。ミャンマー国軍は2月1日、クーデターを起こし、アウンサンスーチー国家顧問らを拘束。国内外から非難の声が上がっている。

350億円の大型案件

OHCHRに調査を要請したのは、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、ヒューマン・ライツ・ナウ、日本国際ボランティアセンター(JVC)、ジャスティス・フォー・ミャンマー、メコン・ウォッチの5つのNGO。

Yコンプレックスは、ホテル、事務所、長期滞在者向けサービスアパートメントを併設し、レストランやカフェ、コンビニも備える。総延床面積は約9万2000平方メートル(ホテルオークラ東京のおよそ半分の広さ)。年内に開業する予定だ。

立地は、観光地として有名なシュエダゴンパゴダとヤンゴン中心部の真ん中辺り。日本大使館、日本人学校、高級ショッピングモール「ジャンクションシティ」にも近い。日本人の旅行者、滞在者にとって最高のロケーションだ。

Yコンプレックスの開発事業は主に日本企業が主導する。フジタ、東京建物アジア、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN、日本政府が株式90%を保有)の3社は特定目的会社ヤンゴン・ミュージアム開発(YMD)をシンガポールに設立した。

YMDは、ミャンマーの大手企業アヤヒンターの子会社ヤンゴン・テクニカル&トレーディング(YTTC)と合弁会社「Yコンプレックス会社」を作り、Yコンプレックスの開発を進める。総事業費は約3億3250万ドル(約350億円)だ。

フジタは、Yコンプレックスの設計と施工を、東京建物アジアは竣工後の商業スペースの管理運営を担当する。またホテルオークラがホテルとサービスアパートメントを運営する。

融資するのは、三井住友銀行、みずほ銀行、日本政府100%出資のJBICだ。総額は1億4400万ドル(約150億円)になる。

賃貸料は軍の口座へ

Yコンプレックスの開発はBOT(建設・運営・移譲)方式で進める。BOT方式とは、民間企業が施設を建設し、一定期間運営して収入を得た後、土地の所有者に施設を移譲するやり方。国などの公的機関がお金を出さなくてもいいので、発電所や高速道路などを建設する際によく使われる。

問題はYコンプレックスの契約相手が国軍なことだ。ジャスティス・フォー・ミャンマーは2020年11月、YコンプレックスのBOT土地賃貸借契約書を入手した。そこには、国軍最高司令官、補給担当将軍、YTTCの3者間での契約と記されていたという。Yコンプレックスは軍の所有地である軍事博物館の跡地に建設され、土地の賃料は直接、軍の補給担当局の口座に振り込まれる。このお金は、国軍の武器や軍事機器の購入に充てられるとの見方が強い。

ミャンマーの独立系メディア、ミャンマー・ナウによると、賃料は毎年218万ドル(約2億3000万円)にのぼるという。

BOT契約の期間は2013年からの50年間。Yコンプレックス側は10年の延長を2回することができる。契約が終わった後は、Yコンプレックスは国軍の資産となり、利益はすべて国軍のものになる。

5つのNGOは要請書の中で「日本企業(Yコンプレッスクに関連する企業)の関与は、残虐なミャンマー国軍に直接資金を提供し、価値ある固定資産をも提供することになる」と強く批判する。

ジャスティス・フォー・ミャンマーは2020年5月、ウェブサイトでこう警鐘を鳴らしていた。

「日本人の旅行者やビジネスパーソンがYコンプレックスを利用すると、そのお金は知らないうちに軍の資金となる。それが、ロヒンギャや少数民族を殺したり、デモを制圧したりするための武器に変わる」

国際NGOのビジネス&人権リソースセンターは2020年9月、Yコンプレックスの開発にかかわる企業に質問状を送った。日本の企業からは「現地の法令に従って適切に事業を行っている」という言葉は聞かれたものの、国軍への資金提供を認めるなど踏み込んだ回答は得られなかった。

日系企業のお金が人権侵害に

YTTCの親会社アヤヒンターは2011年、軍事博物館の跡地を開発する権利を取得。その後、日本企業などとYコンプレックスを立ち上げた。ジャスティス・フォー・ミャンマーによると、「アヤヒンターは国軍の代わりに働く国軍系複合企業」だという。ミャンマー国軍関係者が株をもつ国軍系複合企業は、軍の利権を利用して、ホテル、不動産、銀行、運輸、ヒスイをはじめとする宝石の採掘といった分野で莫大な利益をあげているといわれる。

代表的なのがミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)。40%の株を軍の調達局、残り60%を現役軍人や退役軍人がもつ。ミンアウンフライン国軍最高司令官もMEHLに強い影響力を与えると、ジャスティス・フォー・ミャンマーは報告する。

2011年の自由経済の導入以降、国軍系複合企業は海外の企業と提携し、外資をてこにビジネスを進めるようになった。

MEHLと提携する企業のひとつがキリンホールディングスだ。キリンはMEHLと合弁でミャンマーブルワリーとマンダレーブルワリーを保有し、ミャンマーのビール市場の8割を占める。ただキリンは、2月1日のクーデターが起きてから、キリンはMEHLとの提携を解消すると発表した。

国連の事実調査団は2019年9月、MEHLなどの国軍系複合企業と提携する外国企業がミャンマー国軍の財政を支えていると指摘した。合弁会社の利益が国軍の資金となり、それが少数民族の迫害などに使われている可能性があるとして、外国企業に提携の解消を求めていた。

ミャンマーではクーデターに抗議するため、連日デモが続く。ミャンマー国軍は、指示に従わない市民は武力を持って制圧すると警告。2月26日までに5人が治安当局との衝突により命を落としている。