ごみを分別しないモンゴル、貧困層が生ごみ使って家庭菜園!

ウランバートルの貧困地区「ゲル地区」で堆肥と野菜づくりを住民に広めるのは、モンゴルのNGO「トルゴイド地区地域開発センター(TCDC)」。ゲルの中にある事務所で、TCDCのメンバーと話し合う京滋・モンゴル友好市民ネットワークの柳原勉代表理事(写真奥、2018年撮影)ウランバートルの貧困地区「ゲル地区」で堆肥と野菜づくりを住民に広めるのは、モンゴルのNGO「トルゴイド地区地域開発センター(TCDC)」。ゲルの中にある事務所で、TCDCのメンバーと話し合う京滋・モンゴル友好市民ネットワークの柳原勉代表理事(写真奥、2018年撮影)

土は耕さない

堆肥だけではなく、野菜の育て方も特徴的。それぞれの家の敷地に建てる小型のビニールハウスの中で、土を耕さずに野菜の種や苗を植えるという。日本とは違い、土を掘って溝(畝)をつくらないので平坦のままだ。

この理由について柳原氏は「(モンゴルでは)シャーマニズムを信じる人が多い。土に神様が宿ると考えるので、その土を掘るのはタブー」と説明する。

こうした取り組みが奏功し、初めて収穫できたのが2020年9月。住民が自由に見学できるよう、TCDCがモデルとして建てたビニールハウスでキュウリが数本採れたのだ。

TCDCのメンバーで、柳原氏の招待で2019年に来日して堆肥づくりを約3週間学んだゴトフ・ダムディンさんとヒシゲ・ドントフさん(ともに元中学教師)はこう喜ぶ。

「ウランバートル市内のスーパーで買うキュウリはいつも2日で傷んでいた。でも(生ごみ由来の)堆肥で育てたキュウリは1週間もった。味もすごくおいしかった」

キュウリ栽培から始めた理由は、ゴトフさんが以前、市販の化学肥料でキュウリを育てたことがあったからだ。生ごみ由来の堆肥と化学肥料をまいた結果を比べやすいと考えたという。

柳原氏は今後、中国からの輸入に頼るレタスやキャベツ、ホウレンソウなど葉物野菜をつくりたいと話す。

生協はモンゴル初!

TCDCはまた、住民が家庭菜園で育てた野菜を市場で売る仕組みも整えた。2019年末に設立したモンゴル初の生活協同組合を使う。

生協に加盟するのは、ソンギノハイルハン区内の5つの地域。1つの地域には12世帯あり、うち2つの世帯がリーダー。役目は、TCDCの教材を使って、堆肥づくりから野菜栽培・販売までのプロセスを広めることだ。

柳原氏は「生協を使った野菜の販売ができるのは、(2021年5月時点で)3年後くらい。お祭りの出店販売のように始めて、徐々に市場へと広げたい」と語る。

TCDCの事務所の隣に建てたモデルのビニールハウス内で、ゴトフさんとヒシゲさんがキュウリを育てるようす。シャーマニズム信仰で神が宿るとされるので、土は掘らずに平坦なまま。手作りの堆肥を苗の根元にかけていく

TCDCの事務所の隣に建てたモデルのビニールハウス内で、ゴトフさんとヒシゲさんがキュウリを育てるようす。シャーマニズム信仰で神が宿るとされるので、土は掘らずに平坦なまま。手作りの堆肥を苗の根元にかけていく

ゲル地区の風景。冬の間(10~5月)はとくに、ゲル地区の住民が家の中で石炭ストーブを使うため、煙のせいでウランバートル市内の空は薄暗い。柳原氏によると、住民が家庭の生ごみや古タイヤをストーブに入れることもざら。不完全燃焼で黒い煙が発生するので、大気汚染に拍車をかけるという

ゲル地区の風景。冬の間(10~5月)はとくに、ゲル地区の住民が家の中で石炭ストーブを使うため、煙のせいでウランバートル市内の空は薄暗い。柳原氏によると、住民が家庭の生ごみや古タイヤをストーブに入れることもざら。不完全燃焼で黒い煙が発生するので、大気汚染に拍車をかけるという

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