ボリビアで唯一の日本人コンポストアドバイザー城井香里さん、生ごみのリサイクルは一石二鳥!

「持続的なウユニプロジェクト」で家庭用コンポストの作り方を教える城井さん。受講者がそれぞれ家から持ってきた野菜クズや果物クズを砂糖水に、発酵食品を塩水に入れ、発酵液を作る。使った発酵食品はボリビアの醤油とボリビアビールのパセーニャ「持続的なウユニプロジェクト」で家庭用コンポストの作り方を教える城井さん(右から2人目)。受講者がそれぞれ家から持ってきた野菜クズや果物クズを砂糖水に、発酵食品を塩水に入れ、発酵液を作る。使った発酵食品はボリビアの醤油とボリビアビールのパセーニャ

南米ボリビアに、コンポスト(堆肥)の作り方を教えることで家庭の生ごみを減らそうと活動する日本人女性がいる。フリーランスのコンポストアドバイザーの城井香里さんだ。ボリビア各地で城井さんが講師を務めるコンポストの講座に参加したボリビア人は2014年から累計1500人以上。「ボリビアの家庭ごみの半分強は生ごみ。コンポストにリサイクルすれば、ごみの量が減るだけでなく、野菜が元気に育つ土も作れて一石二鳥だ」と語る。

キヌアの残さが発酵床に

城井さんのコンポストの講座は、対面式と、コロナ禍で始めたオンライン式の2通りある。また対面式では、ワークショップだけでなく、2020年からは個人の自宅へ訪問しアドバイスするサービスも立ち上げた。いずれも有料だ。

対面式は、コンポストを受講者みんなで作る実習付き。2日間のコースの受講料は60ボリビアーノ(日本円で約900円)。

城井さんが教えるのは、日本発のやり方「高倉式コンポスト」だ。高倉式ではまず、生ごみを分解する微生物を活性化させた発酵液を作る。次に、種菌を落ち葉や米ぬかなどと混ぜ、発酵床を作る。

発酵床ができたら、そこに毎日、生ごみを入れてかき混ぜる。生ごみの量は発酵床の5倍は必要だ。発酵床に混ぜた生ごみは2〜3日ほどで微生物の力で分解される。熟成すればコンポストの完成だ。

高倉式コンポストの良さは、現地で手に入る材料を使うこと。ボリビアならではの材料には、キヌアの残さ、サトウキビの搾りかす(バガス)、トウモロコシのお酒「チチャ」などがある。

コンポストを作るにはまた、容器や囲いも必要だ。城井さんは「ボリビアでは、一軒家を建てる時に多めのレンガを用意する。余ったレンガをブロックのように積み上げて囲いにし、その中でコンポストを作る」と話す。

コンポスト作りには時間がかかるため、講座は、無料のフォローアップ付きだ。コンポストが完成するまで受講者は、メッセージアプリ「ワッツアップ」を使って何度でも質問できる。

「コンポストを作っていると、『虫がわいた』『この状態でいいのか』といった疑問や不安が出てくる。動画や写真を送ってもらい、受講者の質問に答える」(城井さん)

ウユニでも温度は51度に上昇

城井さんの活動場所のひとつが、ボリビア屈指の観光地ウユニ塩湖を擁する、南西部のウユニ市だ。コンポストアドバイザーとして城井さんは2021年3月、ウユニの住民延べ98人に家庭用コンポストをオンライン講習会、対面講習会と訪問アドバイスで教えた。

この活動は、国際協力機構(JICA)の招きで廃棄物処理について日本で学んだボリビア人研修生のグループ「エコ・トモダチ」が主導する「持続的なウユニプロジェクト」の一環。城井さんはプロジェクトが始まる前の2020年11月、ウユニに単身入って、生ごみを分解する微生物がきちんと活動するかどうかを検証した。

ウユニの標高は、富士山の山頂とほぼ同じ3700メートル。そのため空気は薄い。また砂漠気候であるため、空気は乾燥し、夜は急激に冷える。

「気温が10度以下になると微生物の活動は鈍る。寒くなる夜は発酵床に毛布をかけて温度を保った」(城井さん)

城井さんの気がかりをよそに、検証は成功した。発酵床に生ごみを入れて混ぜ始めたら、コンポストの温度は51.2度へ上昇。「ウユニでのコンポスト講習会でも高倉式を教えることに決めた」と城井さんは当時を振り返る。

アドバイスをするために訪れたウユニの家庭で、発酵液の記録をとる城井さん。キヌアの残さとフスマ(小麦を製粉するときに除かれる皮の部分)が手に入ったので、このあと発酵床を作った

アドバイスをするために訪れたウユニの家庭で、発酵液の記録をとる城井さん。キヌアの残さとフスマ(小麦を製粉するときに除かれる皮の部分)が手に入ったので、このあと発酵床を作った

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