「ミャンマー人の半数が2022年初めに貧困に陥る」とUNDPが予測、クーデターと新型コロナで

コロナ禍の中、マスクをつけてクーデターに反対するミャンマー人ら(写真はPexelsより引用)コロナ禍の中、マスクをつけてクーデターに反対するミャンマー人ら(写真はPexelsより引用)

国連開発計画(UNDP)は先ごろ、軍事クーデターの混乱と新型コロナウイルスの流行が続くミャンマーについて「2022年初めに、国内の人口の約半分にあたる2500万人が貧困状態に陥る」と予測した。これは「新型コロナウイルス、クーデターと貧困:ミャンマーにおける負の累積ショックと人間開発に与える影響」と題する報告書のなかで明らかにしたもの。ヤンゴンなどの都市部では、貧困層の割合が3倍に膨れ上がる可能性もあるという。

貧困率が17年前に逆戻り

報告書によると、ミャンマーで2022年初めまでに、新たに貧困状態に陥るのは最大1200万人。かねてからの貧困層とあわせて、国内の貧困層が2500万人になることを意味する。これは2017年の数字の約2倍だ。

2017年のミャンマーの貧困率(1日3.2ドル=約350円未満で暮らす人の割合)は、UNDPと世界銀行の共同調査によれば24.8%。基準の3.2ドルとは、世界銀行が定める国際貧困ラインのひとつ。極度の貧困を指す1日1.9ドル(約207円)のほかに、3.2ドルと5.5ドル(約600円)がある。

2017年に24.8%だった貧困率は、コロナ禍の真っただ中にある2020年末の時点で30.8~36.1%に上昇。さらに2021年2月1日に発生した軍事クーデターの影響を受け、2022年初めには44.2~48.2%に達する見通しだ。

48.2%の貧困率は、軍政下にあった2005年と同じ水準。2011年の民政移管以降、改善してきた貧困率が逆戻りする。国連事務次長補でUNDPアジア太平洋局長を務めるカニ・ウィグナラジャ氏は「いち早く対処しないと、ミャンマーの開発の道筋が長期にわたって途絶える可能性がある」と懸念する。

8割の世帯で収入減

貧困率が上がる原因のひとつが新型コロナの影響による収入減だ。2020年末の時点で、前年から収入が下がった世帯は全体の83.3%。平均で2分の1に減った。

とくに状況が深刻なのは、貧困層が多い農村地域よりも、最大都市ヤンゴンや第2の都市マンダレーなどの都市部だ。UNDPは、2022年までに都市部の貧困層が2017年の3倍に増えると推計。いまも、住民の自宅待機や小売店・工場への休業要請など、政府による感染拡大の封じ込めが続く。

報告書によると、貧困層を雇う会社の中には、非合法のもの(インフォーマルセクター)も少なくない。ミャンマーではもともと、インフォーマルセクターの労働者に対して、社会保険や有給休暇といった制度はないに等しい。合法(フォーマルセクター)の会社は2017年の時点で、第1次産業を除けば、全体の14.1%にとどまる。

第1次産業以外の非合法の会社とは、たとえば市場の商売人や美容師、服の仕立屋だ。こうした会社が抱える従業員の数は1社あたり、新型コロナが広がる前は平均4人。だがコロナ禍で経営難のいまは、2人を解雇、もう1人の収入を減らせざるを得ない状況だという。

1 2