ボリビアで唯一の日本人コンポストアドバイザー城井香里さん、生ごみのリサイクルは一石二鳥!

「持続的なウユニプロジェクト」で家庭用コンポストの作り方を教える城井さん。受講者がそれぞれ家から持ってきた野菜クズや果物クズを砂糖水に、発酵食品を塩水に入れ、発酵液を作る。使った発酵食品はボリビアの醤油とボリビアビールのパセーニャ「持続的なウユニプロジェクト」で家庭用コンポストの作り方を教える城井さん(右から2人目)。受講者がそれぞれ家から持ってきた野菜クズや果物クズを砂糖水に、発酵食品を塩水に入れ、発酵液を作る。使った発酵食品はボリビアの醤油とボリビアビールのパセーニャ

10倍早く堆肥になる

ボリビア人の受講者に城井さんが伝えるのは、「高倉式コンポストのやり方だと、(野菜くずを土に埋める自然なやり方と比べて)10倍速く堆肥になる。また、堆肥の栄養素も10倍高い」。高倉式コンポストは日本のやり方だとPRすると、ボリビア人の受けは良いという。

およそ4カ月半をかけて作ったコンポストは、受講者の家にある家庭菜園などに使う。使いきれない場合は「公園などの木の根元にまいたら」と城井さんはアドバイスする。

コンポストの効果は、ボリビア人も驚くほど。コンポストは土をフカフカにし、保水能力を高める。栄養やミネラルも豊富なので、野菜も元気に育つ。

「受講者からは『トマトは色も鮮やかで甘く、冷蔵庫に入れなくても市販のものより長持ちする』と嬉しい声が届く」(城井さん)

ただ、コンポストを教えるうえでは苦労もあった。ようやくできたコンポストを前に、受講者から「このコンポストは(あなたが)持っていくのでしょ」と言われたことも。

城井さんは「コンポストの作り方をなぜ、私が教えているのか、が受講者にしっかり伝わっていなかった。私のためにコンポストを作らされ、私が売って儲けるのだろうと勘違いする受講者もいた」と反省する。

空きびん・缶もベトベトしない

そもそも城井さんがコンポストに着目したのは、家庭の生ごみを減らせるからだ。

ボリビア政府が2012年に実施した最新の国勢調査によると、ボリビアの家庭ごみの55.2%が生ごみだった。城井さんは「生ごみをコンポストにすれば、かさは10分の1に減る。しかもできあがったコンポストを家庭菜園や家の観葉植物にも与えられる」と力説する。

コンポスト作りのメリットはごみが減るだけではない。コンポストに使う生ごみを分別することで、びんや缶などの資源ごみを汚さずに回収できるようになる。

「ボリビアでは、ごみは分別回収されない。家のごみ箱に生ごみを入れなければ、びんや缶は生ごみでベタベタせずにリサイクルへと回せる」(城井さん)

目指すは「完熟コンポスト」

城井さんの次の目標は、完熟のコンポストを作ることだ。そのためには二次処理が欠かせない。この方法を「橋本式コンポスト」と呼ぶ。

完熟のコンポストであれば、大量の雨があたっても腐らない。「生ごみを処理するコンポスト(高倉式)から、さらに進めて土壌改良のためのコンポスト(橋本式)作りを目指す」(城井さん)わけだ。

熱を上げる二次処理には、200リットル以上の一次処理が済んだコンポストが必要となる。数軒で一次処理済みの家庭用コンポストを持ち寄り1カ所で集めるか、各家庭で一次処理済みのコンポストをためるしかない。

城井さんが完熟のコンポストづくりに挑むのは、ボリビア東部のサンタクルス県バジェグランデ市。日本のNGO「DIFAR」(ボリビアでも登録)が進める予定のリサイクル・プロジェクトの第2フェーズになる。「二次処理をするコミュニティコンポストを作りたい。完熟で、質の高さにこだわる」と、プロジェクト責任者を務める城井さんは意気込む。

コンポストの水分量をチェックする城井さん(中央)。左右の2人のボリビア人はウユニでゲストハウスを営むが、しばらくゲストハウスを空けていたところ、コンポストは枯れてしまった。水分補給について城井さんはアドバイスする

コンポストの水分量をチェックする城井さん(中央)。左右の2人のボリビア人はウユニでゲストハウスを営むが、しばらくゲストハウスを空けていたところ、コンポストは枯れてしまった。水分補給について城井さんはアドバイスする

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