ベイルート大爆発から1年、NGOパレスチナ子どものキャンペーンのリハビリ支援で被災者が回復

脚のマッサージを受ける子ども

認定NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン(本部:東京・新宿)は、レバノンの首都ベイルートの大規模爆発事故で被災した障がい者と障がいを新たに負った人を対象に同団体が提供したリハビリの成果について、オンラインで報告会を開いた。この爆発事故では100人以上が新たに障がい者になったという。

爆発現場近くのレストランで勤務していた男性は、爆発事故で脊髄を損傷し、下半身不随になった。パレスチナ子どものキャンペーンが提供したリハビリ支援を受け、この男性は、洋服の脱ぎ着や、ベッドから体を動かして車いすに移る練習をした。

「リハビリを始めたころはTシャツすら脱げなかった。新しい車いすのおかげで、妻の介助もなく、ひとりで家中を移動できるようになった。今後は外にもひとりで出てみたい。厨房に戻ることが夢」と語る。

別の男性は、爆発現場の港で勤務していたところ、右目を失明、右足を切断した。顔や体中にいまもガラス片が残る。リハビリでは、腕の上げ下げや手首を曲げる練習に取り組んだ。その結果、右腕と右手の可動域が広がった。義足を使った階段の上り下りも訓練し、義足を使って歩けるようになった。

男性は「私が退院した直後、幼い2人の息子は、変わり果てた私の姿を見るたびに泣いていた。息子もリハビリに同席し、マネしてストレッチをしている。最近は『パパはきょう、こんなことができるようになった!』と喜んでくれるようになった」と語る。

爆発現場のそばで買い物をしていた女性は、飛び散ったガラスの破片で右目を失明した。片目だけでは物の感覚がつかみにくくなるなど、日常生活に支障が出る。そこで、ものを積み上げるなど手元での細かい作業を訓練した。

女性は「リハビリは、コロナ禍ということもあってオンラインだった。乳児を抱えながらだったので便利。リハビリを重ねるうちに、左目だけで距離感や立体感をつかめるようになった。いまでは、日中であれば車も運転できる」と話す。

今回のリハビリプロジェクトの期間は2020年11月から2021年5月まで。レバノンの障がい者団体と協力し、理学療法や作業療法による身体的なリハビリや心理的なサポートを提供したほか、歩行器や車いすなどの補装具、衛生用品、日用品も配った。

ベイルートで大規模爆発事故が起きたのは2020年8月4日。港に保管していた硝酸アンモニウムが爆発の原因とされる。死者は200人以上、負傷者は約6500人。レバノンの人口の5%に当たる約30万人が家を失った。