国際NGOプラン・インターナショナル、エチオピアとスーダンで女性器切除の根絶めざす

住民向けの啓発活動でFGM根絶について訴える女の子クラブメンバーたち(©プラン・インターナショナル)住民向けの啓発活動でFGM根絶について訴える女の子クラブメンバーたち(©プラン・インターナショナル)

女性器切除(FGM)をテーマとするイベント(主催:プラン・インターナショナル)がオンラインで開催された。プラン・インターナショナルは、FGMを受ける女性の割合が9割以上とされるエチオピアのアファール州とスーダンの白ナイル州で、FGMから女の子を守るプロジェクトを実施中だ。このプロジェクトを担当する冨田佳代さんは「すべてのFGMは人権侵害。エチオピアでは2017年からの3年間で300件以上のFGMを未然に防いだ」と語る。

FGMとは、女性の外部生殖器の一部または全体的な切除、あるいは傷つける行為のことだ。アフリカや中東、アジアの一部など約90カ国でいまも行われている。女性器を切除される女の子は毎年410万人にのぼるという。これは横浜市の人口よりも多い。

FGMの最大の問題は、切除する時だけではなく、生涯にわたる苦痛や後遺症を女性にもたらすことだ。切除の際は当然、激痛や出血をともなう。出血や感染症で命を落とすことも少なくない。また、月経が始まる思春期、結婚した後や出産する時には排尿障害や月経障害、難産・死産、出産で本人が命を落とすこともあるという。

女の子パワーで「FGMにノー」

プラン・インターナショナルがFGMの根絶を目指して運営するのが「女の子クラブ」だ。対象は10~17歳。女の子クラブの開催頻度は月に1回。場所は、コミュニティセンターや学校だ。

冨田さんは「女の子クラブが掲げる目的は、女の子たちにFGM根絶を推進する変革者になってもらうこと。そのためにFGMの弊害を学ぶだけでなく、女の子たちがライフスキルなどを身につけ、FGMを根絶するために周囲にはたらきかけることが大切だ」と話す。ライフスキルとは、問題解決能力、対人関係スキル、コミュニケーション能力など、生きていくために必要な技量を指す。

具体的な活動はこうだ。参加する女の子がいくつかのグループに分かれ、あるときはFGM根絶に向けて何ができるのかを真剣に話し合う。またあるときは、それぞれの参加者が父、母、女の子の役割を演じるロールプレイを通して、家族間の対話の仕方を学ぶ。FGMの弊害についての歌を一緒に歌ったりもする。地域住民向けのFGM根絶のための啓発イベントでは、女の子クラブで学んだFGMの弊害を堂々と発信する。

「違法」でも「やめたくても」

実は、プラン・インターナショナルが活動するエチオピアやスーダンでもFGMは違法だ。エチオピアでは2004年に、スーダンでは2020年に法的に禁止された。

法律が禁じているにもかかわらず、FGMはなくならない。エチオピアとスーダンを例にとると、FGMを受けた女性の割合はそれぞれ65%、86.6%。プラン・インターナショナルがプロジェクトを現在実施するエチオピアの北東のアファール州は91.2%、スーダン南部の白ナイル州は93.7%とその国の平均をかなり上回る。

驚くことに、FGMに反対する人はエチオピアやスーダンにも多い。国連児童基金(UNICEF)が2020年に発表した報告書によれば、エチオピアでは15~49歳の女性の79%、男性の87%が「FGMはやめるべき」と回答した。この傾向はスーダンでも同じ。UNICEFの2016年の調査によると、52.8%と半数以上の女性がFGMに反対している。

FGMの根絶に立ちはだかるもう一つの壁は、個人ではやめたいと思っても、やめられないことだ。

冨田さんは言う。

「FGMがなくならないのは、コミュニティが求める慣習だと考える人がいまだに多くいるからだ。また、FGMは幸せな結婚につながるという思いや宗教がFGMを推進しているといった誤解があること、切除の弊害を知らないこと、FGMを禁じる法律が機能していないことも大きい」

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