【Yalla!女子大生のドバイ留学日記②】英語の勉強+就活にも忙しいコロンビア人、留学は隠れ蓑?

ラクダルイサさん(写真左)と筆者(写真右)。今月初めに砂漠ツアーに一緒に行き、ラクダに乗った時のようす

「第2の人生」をドバイから

ドバイに来るコロンビア人は学生にとどまらない。ルイサさんと同じく中上級レベルの英語力をもつミゲル・エンジェル・アコスタ・メロさん(32)は、4カ月前にドバイに来るまで、コロンビアにある日本の建設機械メーカー、コマツで機械エンジニアとして3年働いていた。その前は米国の農業機械メーカー、ジョンディアで2年、さらにその前は日産で8年働いたという。

「仕事を辞めてまでドバイに留学したいと思ったのはどうして?」。何か大きな理由があるのではないかと私は興味津々で尋ねた。

「13年ずっと機械エンジニアとして働いてきたから、それ以外の仕事に就いてみたいと思ったんだ。『第2の人生』だね。もともとは勉強も仕事もできるオーストラリアに3カ月間留学したかったけど、コロナ禍で難しかった。手っ取り早く実現できる場所がドバイだったんだ」

「もう仕事は探しているの?」。続けて聞いた。

「これまでに、ホテル2社(運搬係とホスト)とレストラン1社(ウエイター)の面接を受けたよ。ホテルはどちらも、最初に示された給料が1750ディルハム(約6万4000円)と安くて断った。

レストランのほうは面接の結果待ちだけど、月給は2500ディルハム(約9万1500円)。ここは、サッカーワールドカップに合わせて8~9月にオープンする、東アジア料理レストランのカタール店なんだ」

「いつまでに仕事を探す必要があるの?」。切迫しているのかどうか、私は心配になった。

「9月22日までだね。700ドル(約9万4000円)払って取った半年の学生ビザが切れる日なんだ。仕事が見つかったら、雇用先の会社が就労ビザを申請してくれるから、1~2年継続して働くことができる。僕の場合、学校の授業が残り1カ月半で終わるから、その後は仕事探しに集中できるよ」とミゲルさんは笑顔で話す。

彼の目標は、1カ月に4500ディルハム(約16万4800円)をドバイで稼ぐこと。この額だと、ドバイでの生活費とコロンビアの銀行にある借金の返済に充分にあてられるからだという。ただ彼によると、ドバイでの就労経験がないかぎり、高い給料の仕事をもらうことは難しい。

コロナ禍で「ドバイ留学」が流行

「同僚や知り合いにも、留学したり外国で働いたりしたいと考えるコロンビア人は結構いるの?」。ルイサさんの話を思い出し、海外志向の高さを尋ねた。

「そうだね、一番人気はやっぱりアメリカ。でもビザが取りにくくて、3カ月間の観光ビザの状態で働く不法労働のケースが少なくない。僕も2回アプライしたけど認められなかった。留学先にドバイを選ぶ人はまだまだ珍しいと思う」とミゲルさんは明かす。

ビザの問題はルイサさんの話にも出てきた。逆にドバイがここまで外国人の入国にオープンになれる理由は何だろうと不思議に思う。

ちなみに、学校の寮で私のルームメイトだったロシア人は「ウクライナとの戦争の影響で、今は他の国に入れない。でもドバイなら大丈夫だった」と話していた。コロナ禍や戦争で世界情勢が不安定なのに、一体どれほどの豊かさと余裕があるのか・・・。

「ドバイについて、コロンビアの留学エージェントはどう宣伝しているの?」。「おススメはドバイ留学!」などと打ち出しているのか、私は疑問に思った。

「僕が使ったエージェントは、もともとイギリス、ドイツ、ニュージーランド、カナダ、マルタへの留学も斡旋していたけど、コロナ禍でドバイが加わった。マルタかドバイの2択になったね」とミゲルさんは話す。

「マルタかドバイ」という2択は、私が様々な留学エージェントに相談した時と同じだ。タイやコロンビア、日本など世界中の留学業界で「ドバイ留学」が新たに出てきたと考えると面白い。新型コロナと同時進行の「流行」だ。

コロンビアで機械エンジニアとして13年働いてきたミゲルさん(写真左)と筆者(写真右)。入学して最初の1週間、クラスメイトだった

コロンビアで機械エンジニアとして13年働いてきたミゲルさん(写真左)と筆者(写真右)。入学して最初の1週間、クラスメイトだった

26時間のフライトに乗せる夢

「仕事が見つかったら、ずっとドバイで働くつもりなの?」。完全にドバイに移住するのどうかを尋ねた。

「いや3~5年の予定だね。いつかイタリアやスイス、ポルトガルなどヨーロッパで働きたいんだ。第一候補はイタリア。スイスとの国境近くの街に姉が仕事で住んでいるからすぐに会えるでしょ。でもコロンビアからの距離を優先するとしたら、カナダがいいね」とミゲルさん。

ドバイに移住するどころか、世界を飛び回るのかと知った私は度肝を抜かれた。

コロンビアからだと、ヨーロッパもドバイも遠い。ミゲルさんによれば、コロンビアからドバイに行く最安値のルートは「コロンビア→パナマ→アメリカ(2回)→カタールかオマーン→ドバイ」。乗り換えが4回ある約26時間のフライトだ。ドバイ留学を隠れ蓑にして、コロンビア人は夢を叶えていくのかもしれない。(続く

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