バングラのロヒンギャ難民900世帯に家庭菜園キット! 日本のNGO「IVY」が配布

バングラデシュ・コックスバザールにある難民キャンプでロヒンギャ難民の女性が営む家庭菜園。うまくいっている菜園をみんなで視察し、学びあうバングラデシュ・コックスバザールにある難民キャンプでロヒンギャ難民の女性が営む家庭菜園。うまくいっている菜園をみんなで視察し、学びあう

バングラデシュ南東部のコックスバザールで、ミャンマーを追われたロヒンギャ難民に「家庭菜園キット」を配り、女性を支援する日本の国際協力NGOがある。山形県山形市に本部を置くIVY(アイビー)だ。支援対象となるロヒンギャ難民の女性が野菜を育て、収入の向上と節約できるようになることを目指す。

子どもの教育費にも!

家庭菜園キットの中身は、ナスやゴーヤ、キュウリ、カボチャなどの種だ。これらの野菜を家の脇の小さな土地で育て、カレーなど、栄養のある食事を家族が食べられるようになる。もちろん食費の節約にもつながる。

また野菜を売れば収入も増える。ロヒンギャ難民の女性は「(新たにできたお金で)女性たちは子どもの教育費の一部を払えるようになった」と話す。さらに家庭菜園を通じて隣人同士の交流も活発になったという。

ただ苦労も絶えない。栽培中の野菜が病気になったり、虫に食われたり、雨季に雨が降らなかったり、また逆に集中豪雨で水害が起こったりすることだ。野菜が水にもっていかれないようケージで囲ったり、高い場所で栽培したりするなどの対策を立ててきた。

できないことだらけ

コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプと受け入れ地域(ホストコミュニティ)でIVYが支援を始めたのは、いまから4年前の2018年だ。これまでに井戸を46本掘り、水浴び室を159カ所、トイレを100カ所建ててきた。

家庭菜園に活動を広げる理由についてIVYバングラデュ事務所の林知美氏は「バングラデシュ政府の難民キャンプに対する制限」を挙げる。難民キャンプでは正規の就労は違法なうえ、移動の自由もなく、また家畜の飼育も禁じられている。

バングラデシュではまた、NGOが難民キャンプの住人にお金を直接寄付することも禁止だ。林氏は「できることが限られる厳しい環境で、やれることが家庭菜園だった」と説明する。

バングラ人には農業指導

家庭菜園プロジェクトでは、ロヒンギャ難民への支援だけでなく、ホストコミュニティの女性に対しては農業技術を指導してきた。暑さに強い野菜の品種を紹介することで収穫量が増加。また適期とずらした時期での栽培を推進したり、野菜を市場で売ったりすることで、収入もアップしたという。

コックスバザールの市場での野菜売りは圧倒的に男性が多い。IVYは、農業技術の指導にとどまらず、女性たちが気軽に市場で野菜売れるための環境も整えたい考えだ。

ホストコミュニティでの活動について林氏は「ロヒンギャ難民を受け入れることで、受け入れ地域の人たちも、仕事の取り合いによる収入の減少、(井戸のような)水源の枯渇、ごみの増加などの問題を抱える。双方に支援が必要だ」と話す。

続けるためにCFで250万円

IVYが進める家庭菜園プロジェクトは目下、緊急人道支援を手がけるネットワーク団体ジャパン・プラットフォーム(JPF)から活動資金を得ている。ただその援助は10月14日で終わる。プロジェクトを今後も続けるためIVYは、目標額250万円のクラウドファンディング(CF)を立ち上げた。締め切りは8月31日夜の11時だ。

集めたお金は、ロヒンギャ難民とホストコミュニティの住人の両方に使う。

用途は、ロヒンギャ難民に対しては、これまでの支援対象である900世帯へ野菜の種の配布、パートナー団体が運営する「ロヒンギャ女性のための施設」(衛生や暴力についてカウンセリングを受けられる場所)への新しい家庭菜園を作ること、その施設に通う女性200人への野菜の種の配布、野菜を育てるための技術指導などだ。

ホストコミュニティに対しては、野菜市場にトイレや井戸、水場、ごみ処理場を設ける。

CFの返礼は、難民キャンプの家庭菜園オンラインツアーやロヒンギャの家庭料理・食文化を紹介するオンラインイベントへの参加などだ。