ミャンマーを追われた95万人のロヒンギャ難民、「バングラに定住の可能性も」と大橋正明氏

バングラデシュ・コックスバザール県にあるクトゥパロン難民キャンプで暮らす少年たち。2017年には約70万人のロヒンギャがバングラデシュに押し寄せた(写真提供:聖心女子大学グローバル共生研究所)

日本は100億円以上の支援を

大橋氏はまた、ロヒンギャはかねてからミャンマーやバングラデシュだけでなく、世界各地に移民している点に注目する。移民の数は200万人ともいわれ、カタール・ドーハに本社を置くメディア「アルジャジーラ」によると、2017年時点で、パキスタンに35万人、サウジアラビアに20万人、マレーシアに15万人が住む。米国に1万2000人、オーストリアにも3000人ほど移ったという。

この状況について大橋氏は、かつて世界中から資金を集めてスリランカで武力闘争を展開した「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)と重なる部分があると指摘する。

大橋氏によれば、ロヒンギャの武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)の資金源は世界中のロヒンギャ、特にサウジアラビアの富豪たちだ。ARSAの指導者アタ・ウラー氏は、パキスタン生まれのサウジアラビア育ちのため、世界中から集めた資金をもとにパキスタンで武器を調達するという。

「LTTEのような組織を生み出す土壌を作らないためにも、世界各国がバングラデシュ政府やNGOを積極的に支援することが大切。各国がロヒンギャの再定住を認めることも必要だ」(大橋氏)

日本政府は70万人のロヒンギャ難民がバングラデシュに流入した2017年以降、バングラデシュに対して1億7500万ドル(約235億円)を供与してきた。大橋氏は支援の長期化を見据えて「国際協力機構(JICA)や外務省にロヒンギャに特化した専門家チームを立ち上げ、年間100億円以上の支援を継続すべき」と訴える。

さらにバングラデシュ政府に対しては、ロヒンギャ難民を出稼ぎ労働者として正式に認め、「正規の労働者」に準じた扱いをするよう求める。具体的には、経済特区などの一角に中層アパートのキャンプを作り、特区で新たに働き出すバングラデシュ人の代替として働くことを想定する。

コックスバザール県のクトゥパロン難民キャンプの中にあるバザール(市場)のようす(2023年1月撮影)。配給される食料や日用品では足りないため、難民らは野菜や魚、お菓子などを売る店を開く(写真提供:聖心女子大学グローバル共生研究所)

コックスバザール県のクトゥパロン難民キャンプの中にあるバザール(市場)のようす(2023年1月撮影)。配給される食料や日用品では足りないため、難民らは野菜や魚、お菓子などを売る店を開く(写真提供:聖心女子大学グローバル共生研究所)

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