理不尽な社会で生きるロヒンギャの子どもたち、笑顔の先に明るい未来はあるのか?

写真の少女は、ミャンマーに住むロヒンギャ。まだあどけない笑顔が印象的だ(三井昌志氏撮影)写真の少女は、ミャンマーに住むロヒンギャ。まだあどけない笑顔が印象的だ(三井昌志氏撮影)

2017年11月から1カ月にわたってミャンマーを取材した写真家・三井昌志さん(43)は先ごろ、帰国報告会を都内で開いた。三井さんが訪れたのは、ミャンマー西部のラカイン州ミャウー。遺跡が数多く残るこの町には、ベンガル系イスラム教徒のロヒンギャが数多く暮らす。ミャンマー政府や仏教徒に迫害され続けるロヒンギャの現状に三井さんは「ロヒンギャの子どもたちの屈託のない笑顔を見ても、彼らに明るい未来が待ち受けている可能性を見出せなかった」と複雑な心情を語った。

三井さんは18年間、アジアを中心にバイクで旅しながら、笑顔をテーマに写真を撮り続けてきた。ミャウーを訪れたのは2回目だ。

「私は、子どもたちの笑顔を撮るたびに、未来への明るい希望を感じる。だがロヒンギャの子どもたちは違う。(ミャンマーの主要民族である)ビルマ族と同じ国に生まれながら、正当な権利を与えられていないことに苦しむだろう。ロヒンギャの子どもたちを将来待ち受ける暗い未来のことを考えるとやりきれない」(三井さん)

ロヒンギャは、「バングラデシュからきた不法移民」とミャンマー政府にみなされているため、ミャンマー国籍をもらえない。三井さんは「ミャウーに住むロヒンギャには移動の自由がない。村の外にあるマーケットや病院、学校へすら行けない。村の外に出ることは違法行為だ」と説明する。三井さんが取材したロヒンギャのひとりは「僕らはまるで檻の中の囚人だ」と話したという。

マスコミや国際社会が注目するのは、虐殺や難民キャンプの状況といった大きな出来事。真っ先に援助を受けるのは、命の危機にいま直面する難民たちだ。ミャウー周辺の村に住むロヒンギャのサデプ・フセインさんは「僕たちは難民ではない。だから自分たちの声はどこにも届かない。国連に助けを求めても、『あなたたちには命があるじゃないの』とあしらわれてしまう」と三井さんに嘆いたという。

迫害に苦しむロヒンギャは難民だけではない。ミャンマー国内にとどまるロヒンギャにも目を向けるべきと三井さん。「基本的人権さえ与えられていない国内のロヒンギャは、国際社会によって救援を後回しにされ、忘れ去られてしまう。これが彼らの現実だ」と語る。

バングラデシュと国境を接するラカイン州北部の町マウンドーでは2017年8月、ロヒンギャの武装勢力「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」が警察を襲撃したことを発端に武力衝突が起こった。ミャンマー政府は、襲撃の報復として、数多くのロヒンギャを虐殺した。武力衝突後、ミャンマーに住むロヒンギャ約100万人のうち60万人以上がバングラデシュへ避難したといわれる。