「世界の報道自由度」途上国トップは東ティモール、マレーシアは40ランクアップ

東ティモールの女性たち。東ティモールは2023年5月20日で独立21年を迎えた。Bryan Ross氏撮影(Pixabayから引用)東ティモールの女性たち。東ティモールは2023年5月20日で独立21年を迎えた。Bryan Ross氏撮影(Pixabayから引用)

中東ワースト1はイラン

中東では、報道の自由度が「非常に深刻」(150〜180位)と評価された国が半数以上にのぼる。

中東のワースト1位はイラン(177位)。ヒジャブ(女性が髪を隠す布)の着用をめぐる抗議デモを徹底的に弾圧したことが大きな理由だ。また、21年に再び政権を握ったイスラム主義勢力タリバンが女性の権利を抑圧するアフガニスタン(152位、中東でワースト8位)では、国営放送局の女性記者140人全員が職を追われた。

報道の自由度が「悪い」(108〜149位)と評価された国が4割を占めるのがアフリカだ。中東・北アフリカ(MENA)の民主化運動「アラブの春」でカダフィ大佐が殺害されて以来、混迷を極めるリビア(149位)や、アラブの春の震源地となったチュニジア(121位)などが代表例。チュニジアは民主化の唯一の成功例といわれたが、サイード大統領が22年に憲法を改正し、大統領の権力集中に舵を切る。

キルギスは50ランクダウン

23年のランキングで注目を集めたのは、前年から順位が大きく変動した国が目立つ点だ。

中央アジアでは、キルギス(122位)が前年から順位を50も下げた。急落の大きな要因は、強権政治を続けるサディル・ジャパロフ大統領が報道の自由を制限する法律を21年に制定したこと。政府を非難すると、名誉毀損罪で訴えられるという。

ラテンアメリカのペルーは110位。77位から順位を33落とした。汚職疑惑で罷免されたカスティージョ前大統領が22年12月、反逆容疑で拘束され、政情不安がいまも続く。拘束に抗議するデモを取材したスペインの通信社のカメラマンが23年1月、警察官に脅迫され脚を撃たれた。

対照的に、順位が急上昇した国もある。ブラジル(92位)とマレーシア(73位)だ。

報道の自由度が改善した大きな要因は政権交代だ。前年から18上昇したブラジルは、記者を敵視するボルソナロ氏からルラ氏が大統領に。40上昇したマレーシアでは22年11月、97歳のマハティール氏から、野党連合・希望連盟を率いていたアンワル氏に首相が代わった。希望連盟は報道の自由も含むリベラルな政策を掲げる。

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