「スラムで暮らす若者にとって最もメジャーな仕事はコールセンターで働くこと」。これは、コロンビア第2の都市メデジンのスラム出身の大学生カルロス・プエルタさんの言葉だ。メデジンには中心部とスラムを空中で結ぶロープウェーがあり、スラムの住民はこれに乗って通勤する。
コールセンターは救世主
プエルタさんは現在、メデジンの名門アンティオキア大学で獣医学を専攻する3年生だ。5歳のころから憧れている職業、獣医に就くために学ぶ。大学に通いながらコールセンターの仕事を2年半続け、学費や生活費、医療費などを稼いだ。
プエルタさんによると、スラムに住むほとんどの若者は高校を卒業した後、フルタイムで仕事をする。生活費をまかなうためなのはもちろん、大学へ進学する場合も学費を自分で稼がなければならないからだ。ただ「スラムから大学に行く人は少ない」とプエルタさんは言う。
だが現実は厳しい。スラムの中にフォーマルな仕事はほぼ皆無だからだ。スラムを出てメデジンの中心部で仕事を見つけるにしても、「求人の多くは実務経験が必要。未経験でも働けるのはコールセンターぐらい。僕の友だちも10人に8人はコールセンターの契約社員か派遣社員だよ」(プエルタさん)。月給は週6日(1日8時間労働)勤務で130万ペソ(約5万円)だ。
ロープウェーで通勤!
コールセンターで働くスラムの住民の多くは、ロープウェーに乗って通勤する。スラムから街の中心部まで約15分 、乗車1回あたりの料金は3210ペソ(約126円)だ。プエルタさんは「メトロカブレ(ロープウェー)はとても便利。でも、行きと帰りは混雑しすぎて乗れないとことがある」と話す。
メデジンには世界からコールセンターが集まる。フランスのテレパフォーマンス、スペインのコネクタ、ルクセンブルクのアテントなどだ。「2年半で5カ所のコールセンターで働いた」とプエルタさん。一番長く勤めたのは、コロンビアで人気のフライドチキンのレストラン「フリスビー」を相手にスペイン語で対応する仕事だ。英語やフランス語、ドイツ語といったスペイン語以外の言語を話せれば、給料は2倍になるという。
スラムの若者にとっては“救世主”となっているコールセンターだが、仕事は決して楽ではない。プエルタさんは「この仕事を長く続けるのは無理。一番嫌だったのは、顧客から罵声や暴言を浴びせられたこと」と振り返る。